「理系だけど計算問題が苦手だから生物を選択したいが、周りに生物選択者が少なくて不安…」
「生物選択だと受験できる学校が少ない…」
「ただでさえ暗記は社会で手一杯なのに、理科でも知識を詰めこまないといけないなんて大変だ…」
これから受験で使用する科目を選択する方の中には、生物を選択することに対してこれらのような疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
確かに「入試科目に生物がない学校が多い」「暗記量が他の理科科目と比べても多い」と思います。
しかし、生物という科目は、知識を完璧にして、問題の特徴や形式を理解してしまえば、計算ミスなどによって大きく失点するリスクなく、安定した点数を取ることが可能です。そのため、適切に取り組むことができれば、他の受験生と大きな差をつけることができる大きな武器となるのです!
そこで今回は、東大を生物で受験した筆者が、「生物」を選択するメリット・デメリット、生物のよくある問題形式とその対策方法をご紹介します。
共通テストの受験者数と平均点
まず初めに、多くの大学受験者が受けることになる、共通テストに着目してみましょう。令和5年度の生物の受験者数と平均点を見てみます。
文系の方が受験される生物基礎の受験者数は約12万人ほどで、理科基礎科目の中で最も多い受験者数となっています。一方で、生物基礎の受験者平均点は49.32であり、理科基礎科目の中で最も低い平均点となっています。
理系では生物の受験者数は約5万8千人で、物理と科学の受験者数と比べるとかなり少なくなっています。また、生物の平均点は48.46であり、物理と化学と比べるとこちらも低めの値となっています。
このように、文系では生物基礎を選択する人が多く、人気の科目となっています。しかし、理系の生物選択者は物理と化学と比べるとかなり少なくなっていることがわかります。また、生物基礎と生物両方に共通して平均点が低いことから高得点を狙いづらい可能性が高いでしょう。
大学入試センター
生物を選択するメリット
計算量が少ない
生物を選択する上でのメリットとしてまず、生物・生物基礎のいずれも計算問題が少ないということが挙げられます。物理や化学では、計算が必要な問題がほとんどであり、途中の計算ミスによる失点や、テスト中の計算がうまくいかないことによるタイムロスなどのリスクがありますが、生物ではこういったリスクがありません。
点数が安定する
メリットの二つ目として、生物では安定して7-8割程度の点数が取りやすいことが挙げられます。
もちろん、十分に勉強した前提ですが…。
理由として次の3点が挙げられます。
1点目は、生物では教科書レベルの知識問題や基本的なことを説明させる論述問題が物理・化学に比べて多く出題されるためです。
正確に記述できることが求められますが、物理や化学の計算問題は、問題によって非常に難しいこともありますので、こういった基本的なレベルの記述問題が安定して出題されることが、得点の安定性に繋がっています。
2点目は、生物では独立した設問が多いためです。物理と化学は、大問ごとに実験や考察があり、それに関連した問題が(1)(2)・・・と続き、前の小問の答えをベースにその後の小問を考えるような問題が多いです。そのため、小問の途中で間違えてしまい、その後の問題を全て落としてしまう可能性があります。一方で生物は、同じく大問ごとに実験や考察など大きなテーマや条件が設定されることはありますが、(1)(2)(3)など、小問が相互に関連しておらず、いずれかを間違えても他の問題は正解できることが多いです。
3点目は、先ほども述べた通り、生物では計算問題がほとんど出題されず、計算ミスによる失点が少なくなるためです。
生物好きはモチベーションを維持しやすい
最後のメリットとして、生物好きにとっては、生物の勉強が全く苦にならないことが挙げられます。
生物を選択する人の中には、医学部、獣医学部、生物系の学部を目指し、大学で生物関連の勉強をしたいと思っている人も多いため、そういった方々にとっては、目の前の大学受験だけでなく、将来を見据えることで、モチベーションを保ちやすいかもしれません。
教科書で知識を吸収し、思考問題で新たな実験や知識に出会うことで、生物にはまっていく受験生も多くいます。
生物を選択するデメリット
次に生物を選択する上でのデメリットを説明していきます。
暗記量が多い
デメリットの1点目に、暗記量が多いということが挙げられます。
もちろん、化学や物理でも知識を覚える必要はありますが、生物での暗記量はそれらに比べてかなり多くなっています。そのため、暗記が苦手な方が生物を選択するとかなり苦労するでしょう。
高得点を取りづらい
デメリットの2点目は、高得点を狙いづらいことです。
物理・化学は計算問題が大半で、数学のように、条件や前提およびそれに使われている数値がなにかによって、解き方のパターンを思いつきやすいと捉えることもできます。
しかし、生物では、前提・条件を踏まえて考える考察問題が多く出題され、それらのほとんどは計算問題ではありません。
そのため、問題集でたくさん使ったような典型的な考え方を適用することのできる問題が少なく、毎回問題に応じてその場で考える必要があります。
また、二次試験では記述問題が多く出題されるため、文章力も試され、説明不足や用語の不足などの失点により高得点を取ることが難しくなっています。
受験できる大学や学部が少ない
生物で受けられる大学や学部が少ないということもデメリットとして挙げられます。
工学部系の入試では、化学と物理のセットが一般的であり、また、工学部以外の一部の医学部や理学部でも同様の制限が存在することがあります。
生物はこんな人におすすめ!
ここまで、メリットやデメリットを含めた生物の特徴を解説してきました。
ここからは、今まで解説した特徴を踏まえて、どのような人が大学受験の科目として生物を選択するべきか、また、どんな人におすすめかを紹介していきたいと思います。
生物系の学部、学科に進学したい人
まず、生物を大学受験の科目として選択するべき人として、生物系の学部に進む人が挙げられます。
理由は明確で、大学での勉強で生物を扱うからです。
もし、生物を選択しないで生物系の学部に進学すると、大学での勉強内容が大学受験までの生物範囲を前提とした内容であった場合に理解できなかったり、同じ学部の大学生が生物選択だった場合、大きな差がついてしまったりする可能性があります。
生物が好き・暗記が得意で考察問題や記述問題が得意な人
次に生物を選択するべき人の特徴として、生物が好きな人や生物の主な出題形式である考察問題や記述問題が得意な人が挙げられます。生物は先に述べたとおり計算問題があまりでません。そのため、極端に記述が苦手ではなく、生物が好きでさえあれば、勉強のモチベーションを保ちやすいはずです。
また、暗記が得意で、考察問題や記述問題が得意であれば、日々の勉強もスムーズなはずです。
受験勉強は、どうしても苦手な教科や興味のない科目を勉強しなければならずストレスが溜まりやすいです。
その辛い受験勉強中で、いかに好きな科目や勉強しやすい科目を選択するかが受験を勝ち抜く鍵となります。
物理・化学がどうしても苦手な人
消極的な考えではありますが、物理・化学がどうしても苦手な人は生物を選択することをおススメします。
物理・化学は計算問題が多く、数学と同じで、どうしても苦手を克服しきれない人もいます。
一方で、生物は、暗記量は多いですが計算問題がほとんど出題されませんので、計算が苦手でどうしても化学や物理に対して苦手意識を感じている人は、消去法で生物を選ぶことも視野に入れましょう。
【志望校別】出題形式の特徴
ここまで生物の特徴やメリット、デメリットを解説してきました。
では次に、みなさんが受験される試験別に、出題形式の特徴や傾向をご紹介していきます。
共通テスト
まずは、文系・理系の方問わず多くの方が受験する共通テストです。共通テストは皆さんご存じの通り、マークシート式であり記述問題などは一切出題されません。
共通テストの問題は主に知識問題と考察問題で構成されています。
考察問題の割合はセンター試験と比べて増加しており、実験の内容や条件を素早く的確に把握し、それを踏まえて設問に回答することが求められます。
また、共通テストでは、複数の穴に入る単語の組み合わせを選ぶような穴埋め問題や正しいグラフを選ぶ問題などの、共通テスト独自の形式の問題がほぼ毎年出題されます。
私立大学医学部
生物選択の方の中には、医学部進学を目指している方も多いと思いますので、私立医学部の生物の出題形式の特徴を説明していこうと思います。
私立医学部の生物の入試問題は知識問題が中心となっていることが多いです。考察問題ももちろん出題されますが、知識問題と比べると少ないです。また、マークシート式の大学もあり、記述問題が必ず出題されるわけではありません。
大学によって異なりますので、受験される大学の過去問を必ずチェックしましょう。
出題範囲は、医学に関係のあるものや専門的なものであることが多いです。そのため、教科書に出てくる生物の知識だけでなく、最近話題となっている医学の時事や、一般的に知られているような医学の知識についても覚えておく必要があります。
これらは教科書に載っていないことも多く、注意が必要です。
国公立大学
次に、国公立大学の生物の出題形式の特徴について解説していきます。
国公立大学の生物は考察問題が中心で、知識問題の割合が低いのが特徴です。知識問題のほとんどは教科書レベルの基礎的なものです。
出題範囲については、私立医学部のように医学系のテーマに限定されず、生物の全ての分野からバランス良く問題が出されます。
また、記述問題が大半の大学が多いため、日頃から論述の練習をすることが大切になります。
生物の問題の形式と勉強方法
最後に、出題形式ごとの対策・勉強方法を解説します。
知識問題
出題形式としては、単に単語を書き記す問題や文章の正否を問う〇×問題など様々な問題があり、教科書レベルの基本的な知識が問われていることがほとんどです。そのため、正解することが前提となっているので、出来る限り落とさないようにしましょう。
一部、専門的・マニアックな知識が問われることもありますが、そういった問題が出題される学校を受験される方は個別の対策が必要です。
知識問題の正答率を高めるためには、一問一答的に用語を覚えるだけでなく、仕組みや現象もセットで暗記する必要があります。生物で暗記の勉強をするとき時のコツが、2点あるので少し紹介します。
1点目は、流れや仕組みを意識することです。生物で知識としてインプットする用語は、特定の現象などの理解や説明に必要な用語であるため、その現象などの仕組みや流れ全体を理解していれば、それに紐づくように、構造的に用語を覚えることができ、忘れづらくなります。
2点目は、教科書の図や写真もセットで覚えることです。図や写真もセットで覚えることで、生物の知識をより体系的に理解できたり、頭の中でイメージしやすくなります。
論述問題
論述問題はざっくりと、主に二つのパターンに大別できます。
一つ目は、現象などを自分の知っている知識で説明する知識問題よりのものです。
二つ目は、提示された実験とその結果などを、自分の知っている知識と照らし合わせながら考察し、設問に応じて記述する思考問題よりのものです。
知識問題よりの論述問題では、基本的には自分の頭の中にある知識で記述を考える必要があり、これまで覚えてきた生物の単語を問題に即して柔軟に使ったり、他の単語と組み合わせて使う必要があります。そのため、それぞれの現象や単語を深く理解しておくことが大切です。
考察問題については以下で説明しています。
どちらのパターンであっても、言いたいことが明確で読みやすい文章を書くことが重要です。試験本番に限られた時間の中で、精度の高い文章を書けるようにするためには、日頃から継続的に記述問題を解いて文章を書く練習をする必要があります。
考察問題
考察問題とは、教科書に載っていないような初見の現象や実験が提示されており、それを読み解きながら設問に答えていくものです。
しかし、初めて提示される現象や知識であっても、その現象や実験自体を知っているかを試されているわけではなく、基本的な生物の知識を使って設問に答えることを求められていることに注意してください。
つまり、考察問題の解き方は、提示された現象や実験と、それに関連する自分の知っている知識を照らし合わせそこから得られた気づきやヒントをもとに、問題に則して回答していくことになります。
しかし、初めて考察問題に取り組む際は、どの基本知識と照らし合わせるべきかわからず、もしわかったとしても、それと照らし合わせてなにを考えればいいのかわからないことが多いと思います。
考察問題を解けるようにするためには、問題を解いた後に、どうしてそのような考え方をするのか、どのように基礎知識を使ってその問題を解くのかといったことをちゃんと復習し、考察問題の思考プロセスを覚えていくことが大切です。
その他の問題
生物の問題形式は、これまで紹介した知識問題、論述問題、考察問題でほとんど構成されていますが、中には計算問題や図を描く問題などの特異な問題も出題されることがあります。
しかし、このような特異な問題のほとんどは大学ごとに特徴的なもので、毎年のように類題が出題されていることが多いので、自分の受ける大学の過去問を研究し対策を行いましょう。
まとめ
以上、生物の特徴と問題形式、そしてその対策を解説してきました。
最後に、生物はやはり教科書レベルの知識を全て覚えていることを前提としてほとんどの問題が出題されているので、生物を選択したみなさんは基本的な生物の知識を全て残さず覚えられるように普段から心がけて、よく復習しましょう!
また、問題形式は大学ごとに異なるので、自分の受ける大学の過去問を徹底的に研究しましょう!
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