中学受験を目指す多くのお子さんは集団塾に通っており、近年は個別指導塾だけで目指す方も増えてきました。
そんな中、少数派ですが、塾に通わずに中学受験を目指す方もいらっしゃいます。
塾なしで中学受験は可能なものの、当然、注意点やデメリットもあります。
今回は、塾なし中学受験のメリット・デメリットや塾なしで中学受験を成功させるためのポイントを紹介していきます。
塾なし中学受験を目指す理由(メリット)
なぜ塾なし中学受験を選ぶのでしょうか。よくある理由を挙げてみます。
費用軽減のため
最もわかりやすい理由は、塾代がかからず、費用の負担が軽くなるからです。
中学受験では、おおよそ300万円ほどの塾代がかかると言われており、さらには受験本番の受験料、通塾の電車代、塾でのお弁当代なども発生すると考えると、膨大なお金が必要になります。
これらがかからないと考えると、塾なしの選択を取られる方がいるのも納得です。
習い事と両立するため
中学受験では、小4で週2程度、小6では週4以上の通塾が一般的です。
そして、塾の授業とは別に宿題が課されますから、習い事と両立することはかなり大変です。
スポーツなどに打ち込んでいる方は塾なし中学受験を選択されるかもしれません。
以下は大手集団塾の各学年時の通塾日数の目安です。
塾名 | 通塾日数 | ||
小4 | 小5 | 小6 | |
SAPIX | 週2回 | 週3回 | 週3回 (9月以降は週4回) |
グノーブル | 週2回 | 週2回 | 週3回 (9月以降は週4回) |
四谷大塚 | 週3回 | 週3回 | 週4回 |
日能研 | 週2回 | 週3回 | 週4,5回 |
希学園(首都圏) | 週2回 | 週3回 | 週4回 |
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自分に合った適切なレベルだけを勉強できる
集団塾への通塾では、お子さんによっては「全然ついていけてないのに授業を受け、非効率的な時間を過ごしている」こともあります。
具体的には、集団塾に通っているものの、
- 授業中にぼーっとしている、寝ている
- 授業は受けているが、既習内容を理解できておらず、授業を全然理解できない
といったケースです。
成績が伸び悩んでいるお子さんでよく見られる状況です。
こういった状況に陥り、小4の冒頭から集団塾に通っていたが、途中で通塾を辞めて塾なしで中学受験をする方もいらっしゃるようです。
塾がなくなることで、無駄になってしまう授業時間をなくし、親がいちから丁寧に教えることができます。
時間効率とお子さんに適切な学習内容の2面から考えると、塾なし中学受験は大いにメリットがありますね。
塾なし中学受験の注意点(デメリット)
当然、塾なし中学受験にはリスクが伴います。
親が教えないといけない(内容面と時間面の負担)
大学受験であれば独学で目指す方も増えますが、中学受験をするのは小学生ですから、自分で教科書を読んで問題集を解き、自己完結で身に着けることはかなりハードルが高く、親が教えてあげることはほぼ必須になるでしょう。
中学受験の学習内容は、扱われている題材が難しいものの、小学生向けになっているため、中高で学ぶ数学や理科の公式をそのまま使うのではなく、小学生向けに解法がアレンジ・簡略化されているものがあります。
例えば、数学の方程式ではなく〇や△数字を使った式で使ったり、理科の電流の単元では、オームの公式ではない解き方を扱います。(実質習っているに等しく、学ぶこともあります)
つまり、そのアレンジされた中学受験特有の考え方を親が教えないといけません。
親に中学受験の経験がない場合は、親もしっかりと勉強して、中学受験テキストの内容に沿って教えることが必要です。
そして、4科目の勉強を毎週各1時間教えてあげるだけでも、お子さんにつきっきりの時間が4時間必要になりますので、共働きのご家庭ではかなり難しいでしょう。
競争心が培われない・自覚が芽生えない
集団塾に行けば、他に中学受験を目指すお子さんがたくさんいるため、彼らと交流することになり、競争心が芽生える可能性があります。
毎月の試験での結果、模試の結果、クラス分け、〇〇中学のコースへの参加基準など、競争心が掻き立てられるポイントがいくつもあります。
塾なし中学受験では競争心が芽生えず、お子さんが主体的に勉強しないことに苦戦するかもしれません。
学習習慣・ペースは親が管理する必要がある
中学受験塾に通い、毎週の授業を受け、宿題をこなしていれば、中学受験の範囲を適切に網羅することができます。
そして、塾の宿題は、お子さんがしっかりと習得できるであろう量が用意されています。
つまり、塾に通っていれば「学習内容はこれであっているのだろうか?」「勉強量はこれで十分なのだろうか?」という疑問は抱く必要はありません。
不安や懸念を抱くとしても、塾から課される宿題を十分に消化できないことや、テストで十分に点を取れないことでしょう。
一方、塾なし中学受験の場合、「使うテキストはこれだけでいいのだろうか…」「復習はこれだけで十分なのか?」といった不安を感じるかもしれません。
テキストの選定、年・月・週単位の学習計画の作成および管理は親の役目になります。
難関中学の合格はかなり難しくなる
塾に通っていても難関中学に合格することは大変難しいことです。
そして、難関中学に合格しているお子さんの多くが、一定程度の競争心を持ったお子さんです。
そのため、難関中学に合格することは、塾なしでも不可能ではありませんが、かなり難しくなるでしょう。
塾なし中学受験で成功するためのポイント
塾なし中学受験を成功させるために取り組んでほしいことをご紹介します。
学習習慣を確立する
集団塾では「全然ついていけてないのに授業を受け、非効率的な時間を過ごしている」ことが発生してしまうと述べました。とはいえ、授業を受け、最低限なにかしらの学びにはなっているはずです。
そして、合算すれば1週間あたりに何時間も勉強の時間を確保していることになります。
そして、「毎週〇曜日の〇時から〇時までが塾、宿題は△曜日に取り組む」といったようにルーティーンが確立されます。
一方塾なしの場合、親が勉強を教える時間、お子さんが宿題に取り組む時間をルーティーンで確保しなければいけません。
小学生が自分で計画・管理することは難しいため、必ず親が計画を立て、先導して学習習慣を確立しましょう。
教材は大手集団塾のものを使う
教材は大手集団塾で使用されているもののうち、市販されているものもありますので、それらを使いましょう。
一般の参考書には見やすいものや、わかりやすいものもありますが、市販の参考書のほとんどは、集団塾に通塾しているお子さんの理解を促進するために作られています。
そのため、問題量が不十分で、定着に至りません。
大手集団塾で使用されているテキストの一式を購入し、導入部を親が説明し、問題が掲載されている箇所は宿題とすることで、塾と同じように進めることができます。
必ず模試を受け、定期的に成績を確認する
ほとんどの中学受験塾では、毎月テストがあり、その結果でお子さんの相対的な順位・偏差値がわかります。
塾なし中学受験ではその機会がないため、必ず模試を受験するようにしましょう。
小4の間はあえて模試を受験しなくても構いませんが、小5以降は必ず受験することをおすすめします。
模試の結果を踏まえて志望校を考え、文化祭にも足を運び、お子さんに中学受験生としての自覚をもってもらうことが大切です。
小6になれば、志望校の合格判定模試が実施されますので、堅実な受験プランを練るためにも模試の受験は必須です。
中学受験成功のポイントを情報収集する
中学受験では、日々の学習を進める中で意識してほしいことがいくつかあります。
例えば
- 中学受験の合否には算数が大きく影響するため、普段の勉強では算数に注力する
- 計算や1行問題は出来る限り毎日練習
- 図表を必ず書く
などです。
こういった指摘やアドバイスは塾の保護者会や面談でもらうことができますが、塾なしの場合はそれがないため、インターネットなどで情報収集するようにしましょう。
必要に応じてオンライン授業、個別指導、家庭教師を利用する
基本的には塾なしで、部分的にオンライン授業、個別指導、家庭教師を利用されている方は多いでしょう。
小5後半になると大人でも苦戦するようなレベルの問題が出題されたり、小6になれば過去問演習が必要になりますので、その際は個別指導塾や家庭教師の出番です。
全て親が教えるとなると、親の負担がとてつもなく大きくなりますので、算数や国語だけなど、特定科目だけサービスを利用すると良いかもしれません。
まとめ
塾なしでの中学受験は、費用の負担を抑えたり、習い事と両立したりといったメリットがある一方で、親が徹底して学習管理を行う必要があるため、大きな労力が求められます。
また、競争心が芽生えづらかったり、難関中学への合格のハードルが高くなるなど、注意すべき点もあります。
塾に頼らずに中学受験を乗り越えるには、家族一丸となって挑む覚悟が必要です。