近年、海外大学への進学に強みを持つ私立中高一貫校が大きく注目を集めています。
多くの保護者や生徒が国際的な視点を身につける必要性を感じており、世界ランキング上位の大学やリベラルアーツカレッジへの進学を視野に入れるケースが増加しています。
海外大学への進学実績が豊富な学校では、国際バカロレア(IB)プログラムや英語イマージョン教育、探究型学習など、世界基準の学力と語学力を養成するための特徴的なカリキュラムを導入しています。
また、帰国生の受け入れ体制を整えたり、英語によるプレゼンテーションやディスカッションの授業、留学プログラムや異文化交流イベントなど、多岐にわたる国際教育も展開しています。
こうした体制は国内大学と海外大学の両受験を可能にするだけでなく、グローバルな学びを実践したい生徒にとっても大きな魅力です。
本記事では、海外大学への進学実績が多い私立中高一貫校10校をピックアップし、それぞれの特徴や取り組みについてまとめています。

なぜ海外大学を目指す生徒が増えているのか
かつては「帰国子女が海外大学を目指す」というイメージが強かった一方、近年では“純ジャパ”と呼ばれる日本育ちの生徒も海外大学を志望するケースが急増しています。以下のような背景が影響していると考えられます。
①総合的な人間力を重視する入試
海外大学の多くは、学外活動や課外活動の実績、リーダーシップ、探究心といった総合的な人間力を重視します。日本の大学も総合型選抜や学校推薦型選抜を拡充し、プレゼンテーションや面接、課題研究などを評価する方向にシフトしています。こうした変化に伴い、「国内大学と海外大学の両方にチャレンジしたい」と考える受験生が増えていると考えられます。
②探究型・国際理解教育の重視
探究学習や国際理解教育、ICTを活用した授業などに力を入れる学校が増え、生徒のアウトプット力や主体的な学びの姿勢が評価されるようになりました。海外大学のリベラルアーツカレッジで行われる幅広い学問領域の学習スタイルは、自分で考える事を重視する私立中高一貫校の教育方針とも親和性が高く、保護者からの支持も集めています。
③奨学金制度の充実
海外大学は学費が高額というイメージがありますが、実際にはニードベース(家庭の経済状況に応じた給付)やメリットベース(優秀な学生を対象とした給付)の奨学金プログラムが充実している場合があります。こうした制度を学校側が発信することで保護者の安心感が高まり、海外を目指す生徒が増える一因となっています。
④ICTの進展による情報収集の容易さ
オンラインミーティングやバーチャルキャンパスツアー、SNSなどが普及し、海外大学の情報が国内にいても手軽に得られる時代になりました。
在学生の体験談をオンラインで直接聞いたり、教授の講義を体験的に視聴したりできるため、「海外」という物理的な距離を感じにくくなっています。
海外大学への進学実績が多い私立中高一貫校10校の特徴
ここからは、海外大学への進学実績が注目される10校をご紹介します。
本セクションの最下部に表形式でまとめています。
広尾学園(東京都・共学)
- 海外大学合格実績: 2024年度:約206名
- 主な合格先: コロンビア大学、カーネギーメロン大学、ブラウン大学など
- 特徴: 医進・サイエンス・インターナショナルコースなど多様なコース制。国内医学部や難関国公立大への合格実績も多く、国内外を併願する生徒に人気。
茗溪学園(茨城県・共学)
- 海外大学合格実績: 2024年度:75名
- 主な合格先: スタンフォード大学、コロンビア大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンなど
- 特徴: 2017年にIBコースを導入。探究学習の時間を重視し、帰国生の受け入れ実績も豊富。行事や授業を通じて異文化交流の機会を多く設けており、国内難関大学への合格実績も高い。
進路実績 | Meikei High School 茗溪学園中学校高等学校
東京学芸大学附属国際中等教育学校(東京都・共学)
- 海外大学合格実績: 32名
- 主な合格先: シカゴ大学、ペンシルベニア大学、ブラウン大学など
- 特徴: IB World Schoolに認定されたMYP認定校。MYP(中等教育プログラム)とDP(ディプロマ・プログラム)を導入しており、一般コースでも英語教育に力を入れている。学費の安さも魅力。
三田国際学園(東京都・共学)
- 海外大学合格実績: 2021年から2024年の過去4年で海外大学に302名合格。
- 主な合格先: トロント大学、ブリティッシュコロンビア大学、シドニー大学など
- 特徴: 2014年に共学校化した新興校。ICT活用や英語イマージョン教育を推進し、オンライン英会話・留学プログラムなど英語力強化の取り組みが多彩。国内難関大との併願もしやすい体制。
渋谷教育学園渋谷(東京都・共学)
- 海外大学合格実績: 2024年度:34名
- 主な合格先: ケンブリッジ大学、UCLAなど
- 特徴: 「自調自考」を理念に、帰国生受け入れや探究学習を重視。少人数制クラスで生徒と教員のコミュニケーションが深い。TOEFLやIELTSなどで高スコアを取得する生徒も多く、国内外問わず進路の自由度が高い。
渋谷教育学園幕張(千葉県・共学)
- 海外大学合格実績: 2024年度:30名
- 主な合格先: シカゴ大学、ペンシルベニア大学、UCLAなど
- 特徴: 千葉県を代表する進学校で、SGH指定校(スーパーグローバルハイスクール指定校)。東大や医学部への高い合格実績を持ちながら、海外大志望者へのサポートにも力を入れている。海外大学キャンパスツアーなどの国際交流イベントも充実。
開成(東京都・男子校)
- 海外大学合格実績: 2024年度:4名
- 主な合格先: トロント大学、コロンビア大学など
- 特徴: 東大合格者数が全国トップクラスの最難関男子校。帰国生入試枠はないが、自主自立の校風を生かし、海外大学受験を希望する生徒を個々にサポート。部活動や行事が盛んで、課外活動実績を積みやすい。
開智日本橋学園(東京都・共学)
- 海外大学合格実績: 2025年度:14名
- 主な合格先: シドニー大学、アムステルダム大学、メルボルン大学など
- 特徴: 2015年に共学化された比較的新しい学校。IBワールドスクール(MYP)認定校。英語イマージョン教育や探究型学習を重視。
合格実績 | 開智日本橋学園中学・高等学校 – 学校法人開智学園
海城(東京都・男子校)
- 海外大学合格実績: 2024年度:12名
- 主な合格先: MIT(マサチューセッツ工科大学)、コロンビア大学など
- 特徴: 東大合格者を多数輩出する男子校。英語教育や海外研修プログラムを強化しており、外部の専門家を招いたセミナーなどで海外大受験の情報提供を積極的に行っている。部活動や行事も活発。
洗足学園(神奈川県・女子校)
- 海外大学合格実績: 2024年度:10名
- 主な合格先: ルーヴェン・カトリック大学、エラスムス・ロッテルダム大学大学など
- 特徴: 幼稚園から大学までを擁する総合学園の女子校。音楽教育に定評があるが、英語コースも充実。帰国生コースやカウンセリング体制を整備し、在学中から海外受験準備を進めやすい。国内大学においても、最難関大学への合格実績が豊富。
学校名 | 男女別・共学 | 地域 | 海外大学への合格者数 | 主な合格先 | 特徴的なコース・プログラム |
---|---|---|---|---|---|
広尾学園 | 共学 | 東京 | 2024:206名 | トロント大学、UCサンディエゴ、ペンシルベニア大学など | 医進・サイエンス・インターナショナルコースなど多様なコース制。 |
茗溪学園 | 共学 | 茨城 | 2024年:75名 | スタンフォード大学、コロンビア大学など | 2017年にIBコースを導入。帰国生を対象とした英語選抜クラスや留学生の受け入れがある。 |
東京学芸大附属国際 | 共学 | 東京 | 2024年:47名 | ブラウン大学、シカゴ大学、ペンシルベニア大学など | IB World Schoolに認定されたMYP認定校。 |
三田国際学園 | 共学 | 東京 | 2021年から2024年の過去4年で海外大学に302名合格。 | トロント大学、ブリティッシュコロンビア大学、シドニー大学など | 2014年に共学校化した新興校。インターナショナルサイエンスコース/メディカルサイエンステクノロジーコース/インターナショナルコース |
渋谷教育学園渋谷 | 共学 | 東京 | 2024年:34名 | ケンブリッジ大学、UCLAなど | 「自調自考」を理念に、帰国生受け入れや探究学習を重視。 |
渋谷教育学園幕張 | 共学 | 千葉 | 2024年:30名 | シカゴ大学、ペンシルベニア大学、UCLAなど | SGH指定校(スーパーグローバルハイスクール指定校一覧)。 |
開成 | 男子校 | 東京 | 2024年:4名 | トロント大学、コロンビア大学など | 東大合格者数が全国トップクラスの最難関男子校。 |
開智日本橋学園 | 共学 | 東京 | 2025年度は14名 | シドニー大学、アムステルダム大学、メルボルン大学など | 2015年に共学化された比較的新しい学校。IBワールドスクール(MYP)認定校。 |
海城 | 男子校 | 東京 | 2024年:12名 | MIT(マサチューセッツ工科大学)、コロンビア大学など | 東大合格者を多数輩出する伝統男子校。 |
洗足学園 | 女子校 | 神奈川 | 2024年:10名 | ルーヴェン・カトリック大学、エラスムス・ロッテルダム大学大学など | 幼稚園から大学までを擁する総合学園の女子校。国内大学においても、最難関大学への合格実績が豊富。 |
学校選びのポイント
海外大学への進学を志望する生徒・保護者が学校を選ぶ際は、下記のポイントを中心に検討するとよいでしょう。
カリキュラムと国際プログラムの充実度
- 探究型学習や英語イマージョン教育
海外大学が求める思考力やコミュニケーション力を養うには、探究型学習や英語でのディスカッションが欠かせません。 - 国際バカロレア(IB)の導入
IBディプロマは海外大学からの認知度が高く、TOEFLやIELTSなどの英語資格スコアと並んで評価されやすいです。 - 海外交流プログラム
短期・長期の留学制度や海外研修、オンラインでの国際交流が整っているかも要チェックです。
海外大学進学アドバイザーやカウンセリング体制
- 専任カウンセラーの有無
エッセイや推薦状、SAT/ACTなどの標準テスト対策、ビザ手続きなど多岐にわたる準備が必要なため、サポート体制が整っているかが重要です。 - 情報共有や模擬面接、エッセイ指導
過去の合格実績のある学校ほど、ノウハウが蓄積されている場合が多いです。
国内大学との併願への対応
- 国内大との両立が可能か
多くの生徒は海外大学と国内大学を併願します。どちらも視野に入れたカリキュラムやスケジュール管理がしやすいかを確認しましょう。 - 国内難関校への実績
東大や医学部をはじめとする難関校への合格者数が多い学校は、最後まで併願を見据えた受験がしやすい傾向があります。
保護者が知っておくべき海外大学進学のメリットと注意点
海外大学へ進学することには多くのメリットがある一方、注意点も存在します。保護者としてはメリットと注意点の両方をしっかり把握しておくことが大切です。
メリット
- 語学力と多文化理解の飛躍的向上
日常生活から授業まで、英語を使うことで、コミュニケーション能力や異文化理解が自然と身に付きやすい。 - 世界的ネットワークの構築
大学の卒業生ネットワークやインターンシップ先での人脈が、将来のキャリア形成に大きく役立つ可能性がある。 - リベラルアーツ教育の恩恵
幅広い分野を学ぶことで、自分の本当に興味のある領域を見極めやすい仕組みが整っている大学も見つけやすい。
デメリット・注意点
- 学費と生活費の負担
アメリカなどの私立大学は特に学費が高額です。奨学金制度の利用や大学ごとの免除プログラムを調べる必要がでてくるでしょう。 - 入学手続き・ビザ申請の煩雑さ
エッセイ、推薦状、標準テスト(SAT/ACT)のスコア提出など、出願手続きに時間と労力がかかります。 - 帰国後の就職活動とのギャップ
新卒一括採用の時期やシステムが日本とずれるケースも多いため、事前に情報を収集しスケジュールを調整しておく必要があります。
まとめ
海外大学への進学を目指す生徒が増えている背景には、グローバル社会の進展や日本の入試制度改革、奨学金の充実などが複合的に影響しています。国際バカロレアや英語イマージョン教育、探究学習などを積極的に取り入れる私立中高一貫校では、国内外問わず多様な進路を選択できる体制を整え、生徒の可能性を広げています。
保護者としては、学費やサポート環境に加え、お子さんが海外大学で必要となるリベラルアーツ的学びや論理的思考に興味を持てるかも重要な見極めポイントです。海外で身につけられるネットワークや語学力は大きな資産になりますが、入学前の準備から卒業後の就職活動まで、デメリットを含めた情報収集と対策は欠かせません。