中学受験の親のサポートは、勉強を教えることではありません。
丸つけをする、1週間の予定を組む、プリントを整理する、今日はどこまでやるかを決める、テストの結果を見て次の週を組み直す。この積み重ねが親のサポートです。
この記事では、サピックスをはじめとする集団塾に通うお子さんを日常的に教えている個別指導塾の立場から、学年別にどこまで手を出すか、具体的に何をするか、やってはいけないこと、共働きで時間がないときの取り組みまで整理します。
- 親がやることの一覧(丸つけ・予定づくり・整理・記録・情報集め・生活)
- そのうち、子どもに任せられない部分はどこか
- 学年別にどこまで手を出すかの線引き(4年・5年・6年)
- やってはいけないことと、それがなぜ効かないのか
- 共働きで時間がないときの最小セット
- 父親の関わり方と、親がしんどくなったときの逃げ道

この記事を書いた人
山本航士
受験アドバイザー
聖光学院中高→慶応義塾大学経済学部→コンサルティングファーム→LEFYにて難関中学受験および中高一貫校生をサポート
親のサポートは「教えること」ではない
教えようとすると、たいていうまくいかない
算数を教えようとして険悪になった、ということは非常によくあることです。
原因は親の教え方が悪いからではありません。
理由は3つあります。ひとつ目は、塾と解き方が違うと子どもが混乱すること。中学受験の算数には塾ごとの型があり、大人が知っている方程式の解き方とは別物です。
ふたつ目は、親子だと感情が入ること。他人なら流せる態度が、親子だと引っかかります。
3つ目は、教える側の負担が大きすぎて続かないことです。
スムーズに親子での勉強が進む場合は親が教えることは非常に有効ですが、実際には中々上手くいかないケースも多く、そういった場合には親の役割から外して構いません。
親がやることは?
親がやるべきことは、丸つけ、1週間の予定を組む、プリントを整理する、送り迎え、今日はどこまでやるかを決める、どこを捨てるかを決める、テストの結果を見て次の1週間を組み直すなどです。
このうち、丸つけや予定づくり、整理といった手を動かす部分は、学年が上がっても親がやって構いません。
小学生は予定づくりや整理の経験がなく、勉強そのもので精一杯です。
今日どこを勉強するか、何を捨てるか、テストの結果を見て次の1週間をどう組み直すか。これらは保護者が決めるようにしましょう。
ただし、試験の時間配分や、優先して解く問題と捨て問の区別だけは、本番でお子さん自身がその場で判断するしかありません。
ここは親が代われないので、テストのあとに答案を見ながら「どれを先に解くべきだったか」を一緒に振り返って、練習として積み上げてください。
学年別:どこまでサポートするか
| 学年 | 親が手を動かすこと | 親が決めること |
| 4年生 | 丸つけ/スケジュール/教材整理/記録。ほぼ全部を親が持つ | 今日やることは親が決める。本人には理由を一言添えて渡す |
| 5年生 | 丸つけは徐々に本人がしてもよい。 親が丸つけをする場合は、正答率や時間を意識させること。 スケジュールと整理は親が継続。 | 日々の勉強のやる順番を本人に決めさせ、親が確認する。試験中に正答すべきだった問題、捨ててもよかった問題などの優先順位付けを親子で確認。 |
| 6年生 | スケジュールと生活の管理に加え、出願・併願・過去問の記録といった事務が増える。 | 判断の量が最大になる学年。過去問をどの順でどれだけ解くか、何を捨てるかは家庭と塾で決める |
4年生:型を作る。親の伴走が必須。
4年生の内容はまだ重くありません。だからこそ、この学年の目的は点数を取ることではなく、1週間の型を作ることです。決まった時間に机に向かう、丸つけをする、間違えた問題を直す。この流れを体で覚えさせます。
型を作る段階では、親が横についている意味が大きいです。特に「間違えた問題に印をつけて解き直す」という作業は、放っておくとまず実行されません。ここを4年生のうちに習慣にできると、5年以降が明らかに楽になります。
ただし、勉強に関して怒ることはできるだけ避けましょう。
4年生時点で勉強と怒られることが強く紐づいてしまうと、勉強そのものを嫌いになってしまい、5年生以降で非常に苦戦します。
5年生:いちばん重くなる。捨てる判断が要る学年
5年生は内容が一気に重くなる学年です。算数の抽象度が上がり、理社の暗記量も増えて、家庭で回す作業量が一気に膨らみます。多くの家庭が「全部は回らない」状態になるのがこの時期です。
ここで必要なのは、頑張ることよりやる範囲を先に決めることです。全部に手をつけて全部が中途半端になるのが、いちばん伸びません。この「捨てる判断」は、5年生の段階ではまだ親が持って構いません。子どもは捨てるのが苦手で、目の前のものから順にやってしまいます。
6年生:判断の量がいちばん多くなる
6年生になると、志望校対策や過去問演習が入り、親が勉強そのものを教えることも難しくなります。
ただし、見えにくくなることと手が離れることは別です。この学年はむしろ、家庭が引き受ける判断の量がいちばん多くなります。
過去問をどの学校から何年分やるか、結果を見て次に何を埋めるか、併願をどう組むか、出願をいつ出すか。ここは家庭が判断する必要があり、迷うところは塾に確認しましょう。
あわせて、生活のリズムを保つことと体調の管理も、この時期は成績に直結します。
この時期に成績で叱ると、逃げ場がなくなります。子
ども自身がいちばん結果を気にしているので、家庭は落ち着ける場所にしておいてください。
具体的にやること
① 丸つけ
4年生のうちは親がその場で丸をつけたほうが、直しまでの流れが途切れません。間違いを見つけたら、その場で解き直すところまでを1セットにします。その場で直すか、あとでまとめて直すかの差は、数ヶ月たつと大きな開きになります。
5年生から本人が丸付けをしても構いませんが、中には答えを見て写してしまう子や、正解ではないのに丸をしてしまう子もいますので、この辺りは保護者が注視する必要があります。
② スケジュール管理
小学生に週単位の計画は立てられませんので親が管理する必要があります。
ただし、詰め込んだ計画は必ず崩れますので、ある程度の余裕を設けておき、できなかった分を回収できる形にしておくとよいでしょう。
デジタル・電子管理が大人には楽ですが、毎日の予定をお子さんが把握するため、紙1枚に、その週にやることを書いて貼っておくのがおすすめです。終わったら線を引く。見える形にすると、本人も進み具合が分かります。
③ 教材とプリントの整理
例えばサピックスのようにプリントが毎回配られる塾では、プリントの管理が重要です。
科目ごとに色分けしたファイルを決めて、帰宅したらそこに入れるといったように、ご家庭ごとの管理ルールを早めに作ってしまいましょう。
④ 記録をつける
間違えた問題とテストの結果は絶対に記録しておきましょう。
間違えた問題は問題にマークをつけ、テストまでに何度か取り組みます。
また、テストの結果は最近は電子交付されることがほとんどですが、もし紙の場合はしっかりと保管しておきましょう。
⑤ 情報を集める
学校の情報、入試の日程、出願の方式、塾のカリキュラムなどを調べるのは、小学生には無理な作業です。
ここは完全に親の担当になります。
やることは、説明会や文化祭に足を運ぶこと、募集要項を読むこと、入試日程を一覧にすることです。
特に6年生は、出願方式も締切も学校ごとに違うので、管理表を作っておくと当日に慌てません。
情報収集で気をつけたいのは、情報に踊らされないことです。
掲示板やSNSを見続けると、他の家庭と比べて不安になるばかりです。
高校受験や大学受験以上に中学受験は、もちろん数字も重要ですが、経験則による判断が大きく影響する受験ですので、信用できる塾の先生の意見を中心にアクションを決めることをおすすめします。
⑥ 生活を整える
睡眠、食事、通塾の送り迎えなども親の仕事です。
最近はスマホやゲームを夜中にこっそりとやってしまい、寝不足のお子さんも増えていますので、このあたりの管理は非常に重要です。
「自走させなさい」を真に受けない
自走という言葉で期待されがちなのは、今日は何をどこまでやるかを自分で決めて進めることです。これを毎日できる小学生は、ほとんどいません。大人でも、優先順位を決めて自分の弱点を分析し、計画を組み直すのは難しい作業です。
本人に期待するのは、次の3つで十分です。
①決めた時間に自分から勉強を始める
②間違えた問題を、言われなくても直す
③分からないときに、塾の先生に質問する
この3つができていれば十分です。
入試本番では、時間配分も、解く順番も、捨てる問題も、お子さんがその場で決めるしかありません。ここだけは代われないので、テストのたびに答案を見ながら「どれを先に解くべきだったか」を一緒に振り返って、練習として積み上げてください。
やってはいけないこと(と、なぜうまくいかないのか)
どの記事にもNG行動は書かれていますが、大事なのは「なぜうまくいかないのか」です。理由が分かると、とっさの場面で止められます。
① 他の子と比べる
「〇〇くんはできているのに」。これがうまくいかないのは、比較が行動につながらないからです。
何をどう変えればいいかの情報がゼロなので、子どもには「自分はだめだ」という結論だけが残ります。
比較ではなく具体的に勉強内容や取り組み内容を伝えるようにしましょう。
② 成績が下がったときに叱る
成績が下がった原因は、たいてい本人にも分かっていません。
分からないものを叱られると、次からは結果を隠すようになります。
下がったときにやるのは、原因を一緒に分けることです。
理解が足りていないのか、演習量が足りないのか、ミスなのか、時間が足りなかったのか。
これを真剣にやってくれないから親も怒ってしまうというのは我々も重々承知ですが、ここは親の我慢です。
比較せず、できるだけ叱らずにかじ取りすることが親の役目だと踏ん張りましょう。
もちろん、約束した勉強をしないことを怒るのはOKです。
成績が下がったことを怒られた、と認識させないようにすることが重要です。
③ 親が先に答えを言う
分からずに止まっている子を見ていると、つい教えたくなります。しかし先に答えを言うと、考える時間を奪うことになりますし、親に教えられたと思うと反抗的になってしまうお子さんも多いです。
止まっているときは、答えではなく手順を聞いてください。
「何が分かっている?」「何を聞かれている?」と徐々にさぐり、ヒントを出してあげましょう。
最終的には、大人からすれば「もはや自分で解けてないじゃん」と思えるレベルでも、おこさんが解けたことにしてあげることで、勉強のやる気を出すことができます。
親が共働きで時間がない場合の最小限の取り組み
共働き家庭だと、毎日つきっきりで勉強を見ることはほぼ無理なはずです。
そういった場合は次の取り組みに絞りましょう。
- ① 毎日やることを固定する(計算と漢字など。内容だけでなく時間帯も決めます。)
- ② 毎日の勉強結果を当日の夜/翌日の朝に親が確認する(ちょっと見るだけでも、ノータッチとは全く効果が異なります)
- ③ 土日は時間を取って勉強をサポートする
それでも手が回らない部分は、外に出す選択肢があります。個別指導や家庭教師は、教科を教えるだけでなく、進度の管理や間違い直しの確認まで引き受けられます。家庭で抱えきれない部分を渡す先として使うのは、現実的な選択です。
父親の関わり方
いちばん反発を招くのが、普段は関わらないのに成績が出たときだけ意見を言うパターンです。子どもにとっては突然の評価になり、お母さんにとっては現場を知らない口出しになります。
関わるなら、継続的に担当する役割を決めてください。日々の丸つけを担当する、週末の勉強時間を見る、志望校選びと費用の判断を持つ、学校見学に一緒に行く。どれでも構いませんが、継続して担当することが重要です。
親がしんどくなったとき
中学受験は3年間続きます。親のほうが先に消耗することは珍しくありません。しんどいと感じたら、気持ちの問題として片づけずに、やることを減らしてください。
全部を見るのをやめて、前述の3つに絞る。塾に相談して宿題の範囲を絞ってもらう。丸つけや進度の管理を外に出す。どれも逃げではなく、続けるための調整です。
家庭の空気が悪い状態が続くと、成績以前に受験そのものが苦しくなります。親が消耗して家庭がぎすぎすするより、外に渡せる部分を渡すほうが本人のためになります。しんどさへの対処は中学受験のストレスで気が狂いそう。子供は反抗期で勉強しないや母親が中学受験でノイローゼに。ストレスへの対処法は?にもまとめています。
宿題そのものが回らない場合の優先順位はサピックスの宿題が終わらない!αの子はどうしてる?に、続けるかどうかの判断が必要になったときは中学受験をやめた方がいい子の特徴は?撤退か続けるかの判断基準を参考にしてください。塾が合っていないだけなら、やめる前に変える選択肢もあります(夏休み明けの転塾はあり?)。
まとめ
- 親のサポートは勉強を教えることではない。教科の内容は塾に任せてよい
- 親がやるのは、丸つけ・予定づくり・整理・記録・情報集め・生活のリズム。教科を教えることは入らない
- 4年生は型を作る学年。親が横につく価値がいちばん高い
- 5年生はいちばん重い。捨てる判断はまだ親が持ってよい
- 6年生は決めることがいちばん増える。過去問の順番、併願、出願はすべて家庭の仕事
- 丸つけは4年生のうちは親がその場で。5年生から少しずつ本人に移してよい
- 自走は目標であって前提ではない。毎日の内容まで任せると勉強量が落ちる
- 本人に期待するのは、始められる・直せる・聞ける の3つ。何をどこまでやるかの判断は家庭が持つ
- 時間がないときは、毎日の固定・週1回の間違い直し・睡眠の3つに絞る
- 親が消耗しそうなら、やることを減らすか外に渡す。続くかどうかがすべて
よくある質問
中学受験で、親はどこまでサポートすべきですか?
学年で中身が変わります。4年生は横について1週間の型を作る時期、5年生は量が回らなくなるので何を捨てるかを決める時期、6年生は過去問や出願まで含めて判断の量がいちばん多くなる時期です。共通するのは、勉強を教えることが親の役割ではないという点です。丸つけ、予定づくり、教材の整理を親が引き受け、今日どこまでやるか、何を捨てるかは家庭で決める。これがサポートの中身です。
勉強を教えられないのですが、大丈夫でしょうか?
問題ありません。教科の内容を教えるのは塾や指導者の役割です。親が教えようとすると、教え方が塾と違って子どもが混乱したり、うまく伝わらずに感情的になったりすることのほうが多いです。親にしかできないのは、生活のリズムを整えること、丸つけや整理を引き受けること、そして受験が終わるまで続けられる状態を保つことです。ここに集中したほうが結果につながります。
「自走できる子にしなさい」と言われますが、どうすればいいですか?
目指すところを分けて考えてください。自走という言葉で期待されがちなのは「今日は何をどこまでやるかを自分で決めて進めること」ですが、これを毎日できる小学生はほとんどいません。ここを求めて手を離すと、勉強量そのものが落ちます。現実的な目標は、決まったことを言われる前に自分で始められる、間違えた問題を放置せず直せる、分からないときに聞ける、の3つです。何をどこまでやるかの判断は、受験が終わるまで家庭と塾が持ったままで構いません。
共働きで時間がありません。最低限どこを押さえればいいですか?
3つに絞ってください。①毎日やることを固定する(計算と漢字など。時間帯も決めます)②週に1回、間違えた問題を一緒に見る時間を取る ③睡眠時間を守る。この3つが回っていれば、毎日つきっきりでなくても学習は積み上がります。逆に、全部を見ようとして週の後半で息切れするほうが、家庭も本人も消耗します。
父親はどう関わればいいですか?
丸投げでも過干渉でもない位置を持つことです。よくあるのが、普段は関わらないのに成績が出たときだけ意見を言うパターンで、これは子どもにも配偶者にも受け入れられません。関わるなら、志望校選びや費用の判断、週末の時間の使い方など、継続的に担当する役割を決めてください。日々の丸つけを担当するのでも構いません。
サポートがしんどくて、続けられそうにありません。
まず、やることを減らしてください。全部を見るのをやめて、上に挙げた3つに絞るだけで負荷は変わります。それでも苦しい場合は、家庭以外に任せる選択肢があります。個別指導や家庭教師は、勉強を教えるだけでなく、進度の管理や間違い直しの確認まで引き受けられます。親が消耗して家庭の空気が悪くなるより、外に出すほうが本人のためになります。
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