中学受験の受験者数は、首都圏を中心に年々増加し、過去最多を更新しています。
それに伴い、中学受験に向けた勉強を始めるタイミングにも早期化の流れがあります。
一方で、中には小6から受験勉強を始めたというような話もあったりなど、いつごろから中学受験に向けて通塾や準備を開始するべきか悩みますよね。
今回は、中学受験に向けて通塾や準備を開始するタイミングや、塾選びのポイント、そして、低学年時に意識しておくとよい勉強方法や心構えをご紹介します。
そもそも、中学受験では塾に通う必要があるの?
もちろん、塾に通わなければ絶対に合格できないというわけではありませんが、基本的には必須であると考えてよいでしょう。
特に難関校であるほど、小学校の勉強では到底太刀打ちできないようなレベルの問題が出題されます。
多くの受験生が塾に通い、中学受験対策をしているため、学校側もそれを前提として入試問題を作成しているケースがほとんどですので、少なくとも、中学受験用教材で勉強することは必須です。
また、中学受験の入試日程は2月上旬に密集しており、試験日が被ったりしているため、無数に受験できるわけではありません。合格できそうなレベルの受験校を選定し、合格を勝ち取る必要があります。
そのためにも、塾の模試を受けたり、塾の先生のアドバイスを踏まえて、志望校を選定する必要があります。
いつから塾に通い始めるべき?
一般的には、中学受験を目指して塾に通い始めるタイミングは、小4が多いです。
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」では、小学校の小1~小6の学年別に”学習塾費”が調査され、以下のようになっています。
4年生から急激に費用額が大きくなっていますね。
つまり、4年生から塾に通う方が最も多いのではないかと推測できます。
全体としては小4から通塾を開始する方が多い一方で、難関校を目指すご家庭を中心に、低学年から通塾を開始されるご家庭もかなり多くいます。
実際に中学受験専門の大手集団塾においても、小学1年生,2年生からコースが開設されていることもあります。
小1、小2、小3から受験勉強を始めるの?なにを学ぶの?
実際には、小1~小3の間は、いわゆる中学受験に向けた受験勉強はあまり多くありません。
以下のような勉強への向き合い方や、思考力等を養うことが主な目的となります。
・学習習慣を定着させる
・思考力、思考体力を養う
・興味、関心、好奇心を養う(学ぶ楽しさを知る)
・数や図形、言葉を感覚的に理解できるようになる
近年の中学入試では、単純に知識を問うような問題は減少傾向にあり、しっかり考えさせられるような問題にシフトしています。
知識を前提として応用的なことを考えたり、「なぜそうなるのか」という仕組みや理由をしっかり押さえることができるかが求められます。低学年コースではそういった力を鍛えるトレーニングができます。
また、小4以降は勉強量も多くなり、難しい問題も増えてきます。
そのタイミングで、低学年時に培った能力で差が出る可能性も十分考えられます。
特に、学習習慣の定着は多くの受験生の悩みですので、安定して着々と日々の勉強をこなすことができることは大きなアドバンテージになるはずです。
小4以降は週に2回~4回程度通塾日数がありますが、小1~小3の時期の授業は、週1日程度です。そのため、そこまで大きな負担となることなく、その他の習い事とも両立することができます。
一方で、早期から塾通いを負担に感じ、そもそも勉強すること自体への抵抗感が芽生えてしまうケースもありますので、この点には注意が必要です。
小5,小6から受験勉強開始では間に合わない?
結論、小5、小6からでも志望校に合格するケースは十分あります。
多くのご家庭は小3,小4ごろから通塾し始めますが、小5,小6から塾に通い始め、最難関校に合格される方も多くいます。
中学受験で最も重要なのは、お子さん自身が、前向きに勉強に取り組むことです。
早期から塾に通い始めたけれど、途中でお子さんが勉強を嫌になってしまい、成績が急に低迷し始めることもかなり多くあります。
つまり、お子さんのタイプや周囲の環境に応じて最適なケースは異なります。
お子さんが前向きに勉強に取り組むことができることを最優先に考え、保護者様は適切に舵取りをすることが大切です。
ただし、小5、小6から中学受験に向けた準備を始める場合、注意点があります。
注意点①:小4の内容は自学自習する必要がある!
多くの中学受験の集団塾のカリキュラムや教材は、小4からスタートすることを想定して作成されています。
そのため、小5、小6から塾に通い始めた場合、小4の内容も一部同時並行で学習を進める必要があります。
中学受験の学習内容は小5から急激に難易度・量ともにハードになってきますので、小4の内容も平行して勉強することは大変かもしれません。
そして、小4の内容は自学自習する必要がありますので、わからないことをどう解消するのかという点もネックになりそうです。
ただし、個別指導塾や家庭教師であれば、小5から、小4の内容も含めて学習計画を作成し、指導してくれるなど、柔軟な対応ができる可能性もあります。
集団塾に通いつつ、小4の内容や、わからない問題だけを個別指導で教えてもらうために個別指導にも通う併用パターンも考えられます。
注意点②:2月が新学年の切り替わり!
もう1点注意しておきたいことがあります。
それは、多くの中学受験の集団塾の学年の切り替えタイミングは2月であるということです。
例えば、実際には小学3年生の2月に、新小4として小4内容の授業がスタートします。
多くの塾で12月前後から入塾説明会が開催されています。
途中からの入塾になると、すでに学習した内容をベースとした単元が理解できなかったり、テスト範囲で全く分からない単元がでてきてしまうことがありますので、できるだけ新学年の切り替わりのタイミングで入塾するようにしましょう。
塾選びのポイント!
中学受験の塾はどんな塾がある?通い方は?
中学受験の塾には大きく分けると、集団塾と個別指導塾があります。
近年は個別指導塾の利用者が増加傾向にありますが、ここでは集団塾に焦点を当てて、塾選びのポイントをご紹介していきます。
個別指導塾の選び方のコツは以下の記事でご紹介しています。
【中学受験】個別指導塾だけで合格できる!?集団塾との違い・比較も
ポイント①:合格実績
お子さんが目指す志望校と同じようなレベルの学校への合格実績があるかという点を確認しましょう。
特に集団塾においては、授業内容、進度、テキストのレベルは、生徒の上位~中位層を意識して作成、選定されています。つまり、その塾の例年の合格実績を達成できるような授業内容やカリキュラムが組まれていることになります。
ただし、合格実績の算出方法は塾によって異なるという点には注意が必要です。
中には、季節講習に通っただけの生徒を合格実績として出したりしているような塾もあったようです。
本当にその塾にはハイレベルなクラスやコースはあるのか、どのような教材を使っているのか、どのような先生が教えてくれるのかなど、具体的に質問をするとよいでしょう。
ポイント②:授業内容、難易度やスピード
集団塾は、個別指導塾や小規模な個人塾とは異なり、指導内容、テキスト、カリキュラム、進度がかなり明確に、具体的に規定されています。
つまり、その塾の校舎間で差がでないよう、標準化されています。
多くの生徒を相手にする集団授業がメインですから、授業内にどの問題を扱うのか、どのような説明をするのか、それぞれ何分程度使うのか、というところまで細かく決められていることが多いです。
また、先述したとおり、集団塾の指導内容や教材、カリキュラムは、その塾の生徒の上位~中位層の学力レベルを意識して作成されています。
できるだけ生徒の学力レベルをあげたい一方で、生徒が全然ついてこれなかったら意味がありませんから、当然ですよね。
そのため、その塾の合格実績がかなりハイレベルな場合、指導内容、教材、カリキュラムはハイレベルに設定されていると考えることができます。
お子さんが授業についていければベストですが、授業内容を理解できていなかったり、宿題が全然終わらなかったり、テストで全くいい点数を取れなかったりした場合は、もう少しゆっくりと着実に進めるほうが向いている可能性があります。
お子さんの状況や性格・タイプに応じて塾を選ぶべきでしょう。
ポイント③:家からのアクセス
中学受験を目指して塾に通う場合、夜9時ごろまで授業があることが多いです。
通う頻度も週に2-4回、小6ではもっと増えるケースもありますので、通塾時間が長いと負担が大きくなってしまいます。
合格実績やお子さんとの相性も重要ですが、家からの通塾時間も検討しましょう。
また、その塾周辺の治安や安全性も重要です。
特にお子さんが一人で塾に通う場合は注意していください。
低学年から保護者がサポートしたほうがよいこと
■小1~小3
低学年のうちは、ガリガリと受験勉強をする必要はありません。
「学ぶ楽しさ」を知り、「思考力」を養成することが大切です。
例えば、ご家庭では次のようなことを意識しておくとよいでしょう。
①遊びやアクティビティなど、様々なことを経験する機会を作る
中学受験では、様々なことの経験値が、理解力、記憶力、応用力の土台になります。
例えば算数では、速さに関する問題が出題されますが、その際、人、自転車、車、電車の移動速度など、すべての速度を覚える必要はありませんが、どれか一つでもおおよその速さを知っておけば、自分が出した答えが妥当なものなのかを判断することができます。
また、理科では、ばねや振り子の問題が出題されますが、実際にバネをいじったことがあるか、振り子のようなものを扱ったことがあるかによって、力の加わり具合や力の方向の感覚もつかめるようになるはずです。
このように、様々な経験が直接、もしくは間接的に勉強の土台となりますので、できるだけ様々な経験を積む機会を設けてあげるとよいでしょう。
また、水族館、博物館など、普通に生活しているだけでは触れないような情報に触れることのできるところへ足を運び、興味関心を喚起することも大切です。
②図形に触れる
中学受験の算数においては、必ずといっていいほど図形問題が出題されます。
図形問題の中には、単に平面図形が書かれているものから、図形が平面上で動くもの、さらには、動く立体図形もあります。
最終的には、紙面上でそういった図形の動きを考えて問題を解かなければいけないため、頭の中で、図形を動かしたり、その図形が動く軌跡をイメージできるようになる必要があります。
そのためには、低学年のころから、積み木のような立体的な図形や、三角定規のような平面に近い図形、その他立体・平面様々な図形に実際に触れておくことが大切です。
③文章を読む・書くことに慣れる
中学受験において、文章を読み、理解することはどの科目においても非常に重要です。
低学年から難解な文章にチャレンジする必要はありませんが、文章への抵抗をなくすこと、そしてしっかりと文意を正しく捉える練習は必要です。
また、文章を書く練習も大切です。
国語の記述問題はもちろん、その他の科目でも記述問題や、考え方を述べる問題が出題されます。
加えて、文章を書くことで、自分の意見を言葉にする能力が養成されます。
どの科目においても、最終的には難しい問題に取り組むことになりますので、自分の考えを言語化して組み立てることができるようになったり、自分はどこがわからないのかを明確にすることができるようになります。
■小4、小5
①勉強習慣を定着させる
小4ごろからは、勉強習慣をしっかり定着させる必要があります。
小3ごろよりも、通塾頻度が増えるに伴い、宿題も増えてくるころだと思います。
算数の計算問題、国語の漢字などは、できれば毎日のように継続的にトレーニングしたほうがよく、毎日決まった量をしっかりこなし続けることからスタートしましょう。
小5、小6とさらに通塾回数、宿題の量が増え、さらに難易度も上がってきますので、小4の段階である程度の勉強習慣をつけておくことが大切です。
②文化祭や学校説明会、体育祭などのイベントに足を運ぶ
成績が伸びる一番の秘訣は、お子さんが自分から能動的に、勉強に楽しんで取り組むことです。
モチベーションアップのため、志望校の文化祭や学校説明会、体育祭などのイベントに足を運ぶようにしましょう。
③子供にあった塾や勉強方法を選んであげる
中学受験指導を行っている塾には、集団授業を行う塾、もう少し少ない人数で少人数授業を行う塾、個別指導を行っている塾があります。
規模が大きく、集団授業を行っている塾では、定期テストにテストがあり、学力レベル別にクラス分けがされていたりします。そのため、競争心がバネになるタイプのお子さんには最適で、飛躍的に成績を伸ばすことができるでしょう。
一方で、競争が苦手だったり、しっかりと着実に理解して進めたいタイプのお子さんもいらっしゃいます。そういった場合、競争環境がフィットせず、中々結果につながらないケースもありますので、個別指導でしっかりと自分が理解できるまで教えてもらいながら、着実に進めていくと急に成績が伸びることもあります。
もちろん、逆もまたしかりで、個別指導塾ではスイッチが入らず、マイペースな勉強になってしまう可能性もあります。
自分のお子さんのタイプにあっている塾や勉強方法を見つけることが大切です。
塾に通い始めたら必ず意識して欲しいこと
中学受験をする意味・目的をお子さんと話す
「なぜ中学受験をするのか」「なぜその志望校を目指すのか」「その学校にいけるとどんないいことがあるのか」など、中学受験をする意味や目的を、お子さまと話すようにしましょう。
お子さま本人が前向きに勉強できるか否かが、成績に最も大きく影響します。
そして、勉強に前向きになれないにもかかわらず、中学受験勉強をすることはお子さまにとってかなり負担が大きいものです。
また、ご家庭にとっても、精神的に、経済的に負担が大きくなってしまいますので、家族が一丸となって前向きに取り組めるようにすることが大切です。
プリント整理やスケジュール管理もサポートしてあげる
中学受験では、4科目の授業が毎週進んでいき、毎週の授業で多くのテキストやプリントが配布されます。
また、毎週の小テストや、定期的なテスト、数カ月の頻度で受ける模試など、テストも頻繁にあり、テストに向けた勉強と普段の塾の勉強、学校の勉強、そしてテストの解きなおしなど、勉強の計画作成と管理も非常に大変です。
あまりに細かに管理しきってしまうと、お子さまの当事者意識がなくなってしまう可能性もありますので、やりすぎは禁物ですが、しっかりと取り組むべきことに取り組むことができるよう、保護者様のサポートが重要です。
頑張りを具体的に褒めてあげる
お子さんの頑張りをできるだけ具体的に褒めてあげるようにしましょう。
テストの点数や偏差値が伸びた時だけでなく、「前よりも〇〇ができるようになったね。」「こんなに難しい問題が解けるのはすごいね。」「毎日集中してこんなに勉強できるなんてすごいね。」など、日々の勉強への取り組みについても褒めてあげるようにしてあげてください。
褒められることはお子さんの最大のモチベーションになります。
迷った時は信頼できる塾に相談してみましょう
「本番ではどれほど難しい問題が出題されるのか」
「合格するためには、家庭でどれくらい勉強しなければいけないのか」
「保護者はどのようなサポートをすべきなのか」
「志望校はどのように選ぶとよいのか」
など、様々な悩みや疑問があると思います。
そういった時はぜひ信頼できる塾に相談してみましょう。
また、インターネットや、お子さんが中学受験をご経験された先輩ママ・パパなどからも情報を集めましょう。
中学受験では、どのような塾を選ぶべきか、どのような勉強方法がよいのかなどなど、ある程度確かな方法はあっても、結局はお子さん次第ですので、何事も完璧な正解はありません。できるだけ多くの情報を収集し、冷静に、客観的に判断することが大切です。
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