サピックスについていけないと感じたとき、最初にやるべきなのは勉強量を増やすことでも転塾を決めることでもなく、原因がどこにあるのかを切り分けることです。学力なのか、家庭学習の運用なのか、気持ちの問題なのか。ここを取り違えると、打つ手がすべて空振りします。
実際、サピックスで「ついていけない」と言われる状態の多くは、授業の内容そのものが理解できないのではなく、配られた大量の教材を家庭でこなしきれなくなっていることが原因です。つまり、直すべきなのはお子さんの能力ではなく、家庭での進め方であることがほとんどです。
この記事では、原因の切り分け方から、小4・小5・小6それぞれの立て直し方、クラスを上げるためにやること、転塾を考えてよい条件までを、サピックス生を指導してきた立場から順に整理します。
- サピックスで「ついていけない」が起きる構造的な理由
- 一時的なつまずきと構造的な問題を見分ける方法
- 小4・小5・小6それぞれで今すぐ見直すべきこと
- 算数・理科・国語・社会の科目別の立て直し方
- クラスを上げるためにやること、やらないこと
- 親がやってはいけない対応と、その代わりにすべきこと
- 転塾を検討してよい条件と、転塾しても解決しないケース
この記事を書いた人
服部貴哉
受験アドバイザー
神奈川大学附属中高→慶応義塾大学法学部→総合商社→LEFYにて中学受験および中高一貫校生をサポート。サピックス・グノーブル両塾の通塾生指導経験を持ち、両塾のカリキュラム特性・教材構成・つまずきポイントを熟知。四谷大塚・日能研・希学園など他大手塾のサポート経験も豊富で、お子さんが苦手なポイントを保護者目線で分かりやすく解説しています。
サピックスについていけないと感じたら、最初に切り分ける
「ついていけない」という言葉が指す状態は、ご家庭ごとにまったく違います。同じ言葉でも中身が違えば打ち手も変わるので、まずはいま起きていることがどれに当てはまるかを見極めるところから始めます。
一時的なつまずきか、構造的な問題か
一時的なつまずきは、特定の単元や短い期間だけ成績が落ちている状態です。体調を崩して1〜2週間遅れた、苦手な単元がたまたま続いた、といったケースがこれにあたります。原因がはっきりしているので、そこだけを埋めれば戻ります。
一方、複数の科目で半年以上成績が下がり続け、家庭全体が疲れきっているなら、構造的な問題です。宿題に毎日3〜4時間かけているのに平均点に届かない、塾に行くのを嫌がる、といった状態がこれにあたります。
この2つを取り違えると、構造的な問題を「もう少し頑張れば戻る」と放置してしまいます。半年以上の低迷と家庭の疲弊が重なっているなら、努力の量ではなく仕組みを疑いましょう。
「クラスが上がらない」と「内容がわかっていない」は別問題
保護者の方が「ついていけていない」と感じるきっかけの多くはクラスです。ただ、クラスが上がらないことと、授業内容がわかっていないことは、まったく別の話です。
サピックスのクラス分けは塾内の相対評価です。通っているのは首都圏の中学受験生の中でも学力上位層で、本人が着実に力をつけていても、周囲も同じだけ伸びていれば順位は動きません。塾内の順位が横ばいでも、中学受験生全体の中では上がっている可能性は十分にあります。
逆に、クラスは維持できていても理解が追いついていないケースもあります。判断材料はクラスではなく、テストで落とした問題の中身です。基本問題を落としているのか、正答率の低い問題だけを落としているのか。ここを見れば、理解の問題かどうかがわかります。
宿題が回らない原因を3つに分ける
「宿題が終わらない」は最も多いご相談ですが、原因は大きく3つに分かれます。
- 学力面:計算力・語彙力・基礎知識に穴があり、1問あたりに時間がかかる。一行問題で手が止まる、文章題で立式までに時間がかかる、漢字や知識問題で何度もテキストを見返す
- 運用面:プリントが整理されていない、どれから手をつけるか決まっていない、丸つけと解き直しが中途半端。今日やることを本人も保護者も把握できていない
- 精神面:クラス落ちや親子のぶつかり合いで気持ちが折れ、机に向かえない。テスト前に泣く、勉強の話をすると不機嫌になる
学力面なら基礎に戻る、運用面なら仕組みを整える、精神面ならまず休ませる。対処はまったく違います。原因を特定しないまま勉強量を増やすのは、どのケースでも逆効果です。
宿題そのものが物理的に終わらない状態が続いているなら、サピックスの宿題が終わらないときの対処法もあわせてご覧ください。
これが出ていたら、成績の話をいったん止める
次のようなサインが出ているときは、成績の話を脇に置いてください。
- 睡眠時間が削られ、朝起きられない日が続いている
- テストの結果を隠す、答案を見せたがらない
- 勉強の話をするたびに親子で言い争いになる
- 塾に行く前に体調を崩すことが増えた
- 「もう受験をやめたい」と口にするようになった
これらは学力の問題ではなく、家庭が限界に近づいているサインです。この状態で教材を増やしても成績は戻りません。まず量を減らして休ませることが先です。
中学受験は通過点です。ここで無理を通すと、合格しても入学後の学習意欲まで失われることがあります。数日休ませたくらいで取り返しがつかなくなることはありません。
現役塾講師目線のポイント
- まず一時的か構造的かを切り分ける。半年以上の低迷+家庭の疲弊なら構造的問題。
- 宿題が終わらない原因を「学力面・運用面・精神面」の3つに分解する。
- 複数の面にサインが出ている場合は、精神面のケアが最優先。安心できる環境がなければ立て直しは始まらない。
なぜサピックスについていけなくなるのか
サピックスの仕組みを理解しておくと、なぜつまずくのかが見えてきます。原因の多くは、お子さんの能力ではなく、塾の設計と家庭の運用のずれにあります。
復習主義で家庭学習の負荷が高い
サピックスは、授業で新しい内容を学び、家庭で復習し、テストで定着を確認するというサイクルを徹底しています。さらに同じ分野を学年をまたいで何度も扱う、スパイラル型のカリキュラムです。
一度わからなくても次の機会に取り返せる設計である一方、家庭で復習が回らないまま次に同じ単元が来ると、そのときには難度が一段上がっています。家庭学習の量と質が、そのまま成績に出る構造です。
テキストは授業当日に配布される
教材は授業当日に配られます。予習を前提とせず、復習を徹底する設計です。授業ごとに複数のテキストとプリント、確認テストが配られるため、家庭では整理し、丸つけし、解き直し、次のテストに備えるという作業が毎週発生します。
プリント整理・丸つけ・解き直し・スケジュール管理のどれかが崩れると、成績は下がります。「ついていけない」の正体が、授業ではなく家庭学習の運用の崩壊であることは非常に多いです。
テキストの難度が学年で急に上がる
サピックスのテキストは、最難関校の合格に必要なレベルまでをカバーする設計です。入試頻出の問題や重要な考え方の型が網羅されている一方、1冊の中に基礎から最難関レベルまでが並んでいます。
難関校を目指す教材としては優れていますが、いまのクラスや学力に対して難しすぎる問題まで全部消化しようとすると、基礎に充てる時間が削られます。「全問やらせる」という方針そのものが、成績を下げる原因になります。
現役塾講師目線のリアル
- ザックリとした目安ですが、クラス数の多い大きな校舎の場合、テキストの問題は真ん中のクラスでなんとか対応できるレベルです。その他の生徒はテキストに取り組むための基礎力が不足していることが多いです。
上位層の中の相対評価なので、伸びても順位が動かない
マンスリーテストも組分けテストも、順位と偏差値は塾内の相対評価で決まります。母集団が中学受験生全体の上位層なので、本人が伸びていても順位に反映されにくい構造です。
塾内の数字だけを見て一喜一憂すると、お子さんの自己肯定感を下げます。判断材料には、全国統一小学生テストや合不合判定テストなど、外部の模試も併せて使ってください。
クラス数が多く、上下が毎月突きつけられる
サピックスは校舎ごとにクラスが細かく分かれ、毎月のテストで編成が変わります。クラスが上がらない、下がったという結果が定期的に突きつけられる仕組みなので、保護者もお子さんも「ついていけていない」という感覚を持ちやすくなります。
大規模校舎ほどクラス数が多く、1つ動くのに必要な点差は小さくなります。逆に言えば、1回のテストの出来でクラスは簡単に動きます。1回の結果に意味を持たせすぎないことが大切です。
現役塾講師目線のポイント
- サピックスは、家庭学習の運用力が成績に与える影響が大きい。
- 通塾生のレベルが高いため、塾内偏差値だけで判断しない。中学受験生全体での位置を意識する。
- デイリーサピックスには現クラスのレベルを超える問題も含まれている。「全問やらせる」意識が成績を下げる原因になることも。
学年別に見る、サピックスの立て直し方
同じ「ついていけない」でも、学年によって原因も対処もかなり違います。小4で必要なことと小6で必要なことは、ほとんど別物だと考えてください。
小4はサイクルを作る時期。完璧を目指さない
小4で最も大切なのは、復習のサイクルを家庭に定着させることです。この時期のカリキュラムは、小5以降の本格的な内容に備えた土台作りが中心なので、難しい応用問題を仕上げる必要はありません。
意識したいのは次の3点です。
- 算数:計算、小数と分数、一行問題、基本的な文章題を確実に解けるまで何周もする
- 国語:語彙・漢字・慣用句を毎日少しずつ。短い文章を最後まで読み切る力をつける
- 理科・社会:授業の内容を食卓でお子さんに説明させる。細かい暗記より、理解できているかを確認する
保護者の方は、丸つけ・プリント整理・「何曜日に何をやるか」のスケジュール管理に回るのが現実的です。小4で全問完璧を目指すと、親子ともに消耗して勉強嫌いにつながります。8割できればよい、難しすぎる問題は飛ばす、くらいの気持ちで続ける方が、結果的に小5・小6での伸びにつながります。
発展問題に取り組むべきお子さんは、多くの保護者の方が考えるよりも圧倒的に少ないです。発展問題に1〜2時間かけるより、その週の基本問題や既習単元の復習を何周もする方が効率は上です。小4でやるべきなのは難問対策ではなく、毎週決まった量を決まった時間にやる習慣づけです。
小5でつまずいたら、比・割合・速さを最優先で埋める
小5は「ついていけない」が最も表面化しやすい学年です。算数では割合・比・速さ・相似といった入試頻出分野に入り、理科も計算系の単元や天体のようにイメージの難しい内容が本格化します。学習量が一気に増えるため、多くのご家庭がこの時期につまずきを実感します。
小5で成績が下がったのは努力不足ではなく、カリキュラムの負荷が一段上がったからです。ここで「全部やらせる」方向に進むと、基礎が固まる前に時間だけが過ぎて、かえって悪化します。
立て直しのポイントは次のとおりです。
- 宿題を基本・標準・応用の3段階に分け、まず基本から標準を優先する
- 平日のスケジュールを全科目均等ではなく、算数中心に再設計する
- 比・割合・速さが弱いまま小6に進むと過去問演習で大きく苦戦するため、この3分野は最優先で補強する
- クラス落ちの原因を「単元理解」「処理速度」「ケアレスミス」「暗記不足」に分けて整理する
現役塾講師目線のリアル
- 原因が処理速度の場合は特に注意が必要 です。処理速度は一朝一夕でなんとかなるものではないためです。単元の理解不足であれば、保護者がサポートする、もしくは家庭教師・個別指導などでなんとかなることが多いのですが、処理速度は改善に時間がかかります。
また、この時期のマンスリーテストの算数は、大問1から3にかけての失点をとにかく減らすことを優先してください。正答率の低い問題が数問まぎれていますが、そこは取れなくても大きな問題にはなりません。150点中100点前後の答案は、例外なく大問1から3の失点が少ないです。
小6は取捨選択。過去問とSS特訓が回らないとき
小6の「ついていけない」は、学力不足だけでなく学習量の多さが原因であることが多いです。平常授業に加えて土曜志望校別特訓が入り、9月からはSS特訓が加わります。平日も週末も塾と宿題で埋まり、自分の弱点に向き合う時間が取れなくなるご家庭が続出します。
過去問が解けない場合は、闇雲に演習を繰り返すのではなく、次の3つに分けて原因を特定してください。
- 知識不足:そもそも該当単元を理解していない。基礎に戻る
- 処理速度:時間が足りない。時間を測りながら反復で底上げする
- 記述力:解き方はわかるが書けない。模範解答の型を練習する
苦手単元は「今から伸ばす単元」と「最低限の得点にとどめる単元」に分けましょう。小6後半に教材を増やすのは危険です。志望校の変更も、模試の判定だけでなく、過去問との相性・本人の状態・併願の組み方を含めて冷静に検討してください。
SS特訓や土特についていけないと感じたら、まず塾の先生に相談して、特訓の宿題のうち志望校対策に直結する部分はどれかを確認してください。全部を完璧にするのではなく、志望校の頻出分野に集中する使い方が、小6後半では現実的です。
現役塾講師目線のポイント
- 小4は「復習サイクルの定着」が最重要。完璧を目指さず、勉強嫌いにさせないことを優先する。
- 小5は比・割合・速さの3分野を最優先で補強。応用より基本〜標準の完全定着を優先する。
- 小6は「やめる勇気」が成績を決める。過去問が解けない原因を考え、志望校頻出分野に集中する。
科目別の立て直し方
どの科目でつまずいているかによっても、手の打ち方は変わります。サピックス生で相談が多い順に整理します。
算数:テキスト後半の難問を捨てる
算数は合否を最も大きく左右する科目で、相談も圧倒的に多い科目です。デイリーサピックスは後半に進むほど難度が上がり、最後には難問が並びます。最難関校志望でない限り、後半の難問は思い切って飛ばし、基礎から標準を繰り返し解いて定着させる方が、テストの得点には直結します。
全部やらないと不安という気持ちは保護者にもお子さんにもありますが、難問を1問解く時間で基礎問題を5問復習できるなら、成績には後者の方が効きます。
基礎力トレーニングは毎日欠かさず続けてください。ここが崩れると、テストで計算に時間を取られ、後半の問題に手が回らなくなります。
理科:計算単元とイメージ系を分けて考える
理科でつまずく場合、原因は大きく2つに分かれます。てこ・ばね・電流・溶解度といった計算単元でつまずいているのか、天体・月の満ち欠けのようにイメージが必要な単元でつまずいているのかです。
計算単元は算数と同じ手当てが効きます。基本パターンを繰り返して型を固めることです。一方でイメージ系は、いくら問題を解いても頭の中で立体が動かないままだと得点になりません。図や動画で動かして理解する方が近道です。
また、理科は暗記単元が得点源になります。生物や地学の知識はコアプラスを繰り返すだけで安定するので、計算単元に時間を取られて暗記が手薄になっていないかを確認してください。
国語:読解より先に語彙と漢字を止めない
国語の成績が落ちているとき、読解の演習量を増やそうとしがちですが、順番が逆です。まず漢字と語彙が毎日回っているかを確認してください。ここが止まると、読解の点数は必ず落ちます。
読解については、解き直しのときに「なぜその答えになるのか」を本文の該当箇所を指させて説明させるのが最も効きます。答え合わせだけで終わらせると、次に同じ形式が出ても再現できません。
社会:暗記より先に「いつ・どこ」を揃える
社会は範囲が広く、後回しにされがちな科目です。ただ、地理・歴史・公民のどれも、細かい語句を覚える前に時代の流れと位置関係が頭に入っていないと定着しません。
地図帳と年表を手元に置き、出てきた語句をその場で位置と時代に紐づける習慣をつけてください。これだけで暗記の効率が大きく変わります。
クラスを上げるためにやること、やらないこと
クラスアップは多くのご家庭の目標ですが、狙い方を間違えると逆効果になります。ここは相談の中でも特に誤解が多いところです。
マンスリーと組分けは狙い方が違う
マンスリーテストは直近で学習した範囲から出題される、範囲の決まったテストです。対策の効果が出やすく、直前に復習した内容がそのまま点数になります。一方で組分けテストは範囲が広く、既習単元全体からの出題になるため、直前の詰め込みでは動きません。
つまり、クラスを動かしたいならマンスリーで確実に取り、組分けは日々の積み上げで受けるという役割分担になります。どちらも同じやり方で臨むと、労力の割に結果が出ません。
マンスリー対策で優先すべきなのは、その期間のデイリーサピックスの基本問題と基礎力トレーニング、そして前回のテスト直しです。新しい教材に手を出す必要はありません。
短期でクラスを上げようとすると、かえって下がる
クラスを上げたい一心で応用問題や追加教材に手を広げると、基礎の抜けが埋まらないまま演習量だけが増えます。結果として基本問題の失点が増え、順位は下がります。
クラスは1回のテストで簡単に動きますが、狙って上げるものというより、基礎を固めた結果としてついてくるものです。半年単位で見て上がっていれば順調だと考えてください。数字の上下に毎月反応すると、お子さんも保護者も消耗します。
家庭でできる立て直しの手順
いきなり転塾を考えるのではなく、まずは今の塾内でできることから始めるのが原則です。順番に見ていきます。
質問教室と保護者面談を使い切る
サピックスには授業外で講師に質問できる時間が用意されています。意外に多いのが、質問教室を一度も使ったことがないというご家庭です。お子さんが自分から行きにくい場合は、「先生にこの問題を聞いてきて」と具体的に問題番号を指定してあげると、行動に移しやすくなります。
保護者面談も積極的に使いましょう。聞くべきことは、抽象的な「成績を上げるには」ではなく、具体的な内容に絞ります。
- 今のクラスでは、どの問題まで解けばよいか
- 宿題のうち、優先順位が低くて飛ばしてよいものはどれか
- 現在のクラスで取り組むべき教材の優先順位
宿題を基本・標準・応用に分ける
デイリーサピックス、デイリーサポート、基礎力トレーニング、テスト直しと、教材は多岐にわたります。すべてを完璧にこなすのは上位層でも難しいのが現実です。
まず各教材を次のように色分けし、基本から標準の定着を最優先にしてください。
- 基本問題(絶対にやる):計算・一行問題・基礎レベルの文章題。テストで正答率50%を超える問題に対応するレベル
- 標準問題(余裕があればやる):典型題、出題頻度の高いパターン
- 応用問題(今は飛ばす):テキスト後半の難問、最難関校対策レベル
テキストを最初から順に解こうとすると、後半の難問で時間切れになり、結局すべてが中途半端になります。全教材の基本問題を完璧にすることを優先してください。これだけでテストの平均点付近には到達できます。
保護者は「教える」のではなく「続ける仕組み」を作る
サピックスの教材は毎週大量に配布されます。小6になると通塾日も増え、相当な量のテキストとプリントになります。これを小学生が自分で管理するのはほぼ不可能です。
保護者の役割は、内容を教えることではなく、次のような進捗の管理です。
- プリントとテキストをファイリングし、すぐ取り出せる状態にする
- 何曜日に何の宿題をやるかのスケジュールを作る
- 丸つけは保護者が行う(間違いの種類を把握できる)
- テスト直しが終わったかをチェックする
これだけでもやるべきことが整理され、成績が一定程度回復するご家庭は多くあります。内容を教えるより、勉強を続ける仕組みを作ることが保護者の最重要の役割です。
個別指導・家庭教師を併用する
家庭でのサポートが難しい場合、個別指導塾や家庭教師の併用が選択肢になります。近年は、サピックスに通いながら個別指導にも週1回から3回通うご家庭がかなり多くなっています。
個別指導は次のような場面で特に効果を発揮します。
- 塾のテキストでわからなかった単元・問題のピンポイントのフォロー
- 過去に習ったが忘れてしまった単元、苦手なまま放置した単元の復習
- テスト前の弱点確認、過去問演習と解説
- 反抗期で保護者の言うことを聞きにくい時期の、第三者からのアドバイス
丸投げするのではなく、サピックスの教材と進度に連動した指導ができるかを事前に必ず確認しましょう。保護者の方が中学受験の経験者でない場合、中学受験特有の解き方とは異なる方法で教えてしまうことがあります。お子さんを混乱させる原因になるため、難しい単元のフォローは中学受験指導の専門家に任せた方が安全です。
現役塾講師目線のポイント
- まず、早い段階で塾に相談する。
- 宿題は基本・標準・応用に色分けし、全教材の基本問題を最優先で完璧にする。
- 算数は後半の難問を諦める勇気と基礎教材の反復が立て直しの王道。
- 個別指導を選ぶなら塾と連動できることが必須条件。
親がやってはいけない対応
お子さんの成績が下がると保護者も焦ります。しかし、焦りから出た行動がかえって状況を悪化させるケースは非常に多いです。代表的なものを、代わりにすべきこととセットで整理します。
テスト結果やクラス落ちで感情的に叱る
マンスリーテストの結果を見て「なんでこんな点数なの」と叱るのは、最もやりがちで、最も逆効果な対応です。叱られた子どもは次のテストが怖くなり、失敗を隠すようになります。
テストが成長のための情報源ではなく叱られる材料になってしまうと、お子さんはテスト前に体調を崩したり、答案を隠したりするようになります。
代わりにすべきこと:点数ではなく間違いの種類に目を向けてください。「これは計算ミス、それとも解き方がわからなかった」「ここは時間が足りなかった」と一緒に分類する姿勢が大切です。点数が悪くても、ミスの内訳を分析できたなら、その時間には意味があります。
宿題を全部やらせる、教材を増やす
サピックスの教材には上位層向けの応用問題まで含まれています。今のクラスや学力に合わない問題まで全部やらせようとすると、基礎問題に充てる時間が削られ、結果的に定着度が下がります。
代わりにすべきこと:塾の先生に「今のクラスではどの問題まで解けばよいか」を確認し、優先順位に従って取り組む量を絞りましょう。成績が下がったときこそ、教材を足すのではなく減らす判断が要ります。
現役塾講師目線のポイント
- テスト結果は「点数」ではなく「間違いの種類」を見る。叱るより一緒に分類する姿勢が成長につながる。
- 成績が下がっても教材を増やさない。今ある教材の基本〜標準問題を3周する方が効果的。
転塾を考えるタイミング
転塾を検討すべきなのは、塾内での立て直しを試しても改善が見られず、家庭全体が疲弊している場合です。質問教室、宿題の取捨選択、個別指導の併用をひととおり試したうえで判断するのが順番になります。
転塾を検討してよい条件
- 半年以上、複数科目で成績が下がり続けている
- 宿題に毎日3〜4時間かけているのに平均点に届かない
- 上記の立て直しを一通り試しても変化がない
- お子さんが塾に行くこと自体を強く嫌がっている
転塾に踏み切るかどうかの判断基準と、夏休み明けに動く場合の学年別の注意点は夏休み明けの転塾の判断基準(小4・小5・小6別)で詳しく解説しています。神奈川で塾を探し直す場合は横浜の中学受験・主要10塾の選び方ガイドもあわせてご覧ください。
主な候補塾の特徴は次のとおりです。
- 四谷大塚・早稲田アカデミー:予習シリーズを使い、予習から授業、復習という流れ。サピックス型の復習だけの構造が合わない場合に検討しやすい
- 日能研:テキストが丁寧で、授業からテスト、振り返りの流れが体系化されている。面倒見のよさを重視するご家庭向き
- 栄光ゼミナール:少人数制で質問しやすい環境。競争環境よりペースに合った学習を優先したい場合の選択肢
転塾しても解決しないケース
注意したいのは、成績低迷の原因が家庭学習の運用面にある場合、塾を変えても同じ問題が起きるということです。プリントが管理できていない、優先順位が決められていない、丸つけと解き直しが回っていない。この状態のまま転塾しても、教材の名前が変わるだけで同じ壁に当たります。
転塾を決める前に、この記事で挙げた運用面の手当てを実際にやってみて、それでも変わらなかったかどうかを確認してください。順番を逆にすると、転塾先でも同じことを繰り返すことになります。
なお、同じ復習主義の塾に移っても構造は変わりません。グノーブルも同じ設計なので、グノーブルの授業についていけないときのフォロー方法もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。
レフィーのサピックス生サポート事例
レフィーでは、サピックスに通うお子さんを完全1対1のマンツーマン指導でサポートしてきました。サピックスのカリキュラム、教材構成、テスト体系を把握している講師が、生徒一人ひとりの状況に合わせて授業を組み立てます。
クラスアップしたい、もっと上位を目指したい、最難関校への合格を確実にしたいなど、ご家庭ごとにご希望はさまざまですが、大事なのはまず通っている塾の授業を完璧に理解して定着させることを最優先に置く姿勢です。お子さんの負担が増えないよう配慮しながら、学習計画と授業の進め方を検討していきます。
実際にお引き受けしている代表的なサポート事例を2つご紹介します。
毎週の塾の授業・家庭での宿題で「分からない・理解が浅い」と感じた箇所を担当講師が確認。理解が不十分な箇所は一から丁寧に、お子さんが納得のいくまで説明し、もう一度演習を実施します。
マンスリーテスト・組分けテスト直前の授業では、これまで学習した範囲の中で不安な箇所をもう一度演習・解説したり、担当講師が把握しているお子さんの苦手問題を再度解いてもらったりなど、テスト直前の仕上げまで丁寧にサポートします。
塾の毎週の授業を十分に習得できているお子さんには、毎週の塾の授業のサポートをベースにしつつ、追加教材を用いて難問にも挑戦してもらいます。
最終的な志望校の出題傾向に合わせて、緻密な調べ作業系の問題、記述形式の問題などを意識しながら授業を実施。志望校特有の癖に合わせた演習を積み重ね、最難関校への合格を確実にします。
サピックスと当塾レフィーを併用されているご家庭、4科目すべてをレフィーで受講されているご家庭、いずれもクラスアップやワンランク上の志望校への合格という形で着実に成果を出されています。
次のようなお悩み・ご要望がある方は、お気軽にご相談ください。
- 算数・理科の成績を伸ばしてクラスアップしたい
- 追加教材は負担が重いので、教材を増やさずに対応してほしい
- 取り組む問題を絞りたいが、取捨選択の仕方がわからない
- 難関校出身の講師に教えてもらい、お子さんのモチベーションを上げたい
よくある質問
サピックスのクラスが下がり続けています。転塾すべきでしょうか?
まずは転塾の前に、宿題の優先順位を見直す、塾に相談する、個別指導で苦手単元を補強する、といった手を試してください。それでも半年ほど改善が見られず、家庭全体が疲弊している場合に、四谷大塚・日能研・早稲田アカデミー・栄光ゼミナールなどへの転塾を検討する順番になります。
サピックスのテキストは全部やらないといけませんか?
全部やる必要はありません。デイリーサピックスは1冊の中に基礎から最難関レベルまでが並んでいるため、最難関校志望でない限り後半の難問は飛ばして構いません。難問を1問解く時間で基礎問題を5問復習できるなら、テストの得点には後者の方が効きます。どこまで解くべきかは、担当の先生に「今のクラスではどの問題まで解けばよいか」と具体的に確認するのが確実です。
個別指導や家庭教師を併用する場合、週何回が目安ですか?
週2回程度、苦手科目に絞って併用するご家庭が多いです。多くの場合は算数か理科になります。塾の復習や宿題をこなす時間を圧迫しないよう、個別指導の曜日とサピックスのスケジュールを事前にすり合わせることが重要です。
小6の9月以降、SS特訓や土特についていけません。やめても大丈夫ですか?
基本的には受講をおすすめしますが、志望校対策になっていない場合や、学力レベルが合っていない場合は受講しないという判断もあります。考えるべきなのは、受講しない代わりに何に取り組むかです。志望校の過去問に取り組む、コアプラスを保護者がチェックするなど、具体的にやることを決めて実行できるなら受講しない方がよいケースもあります。決めきれないなら受講した方が無難です。
塾内偏差値が下がっていますが、学力は伸びていないのでしょうか?
塾内偏差値はあくまで塾内の相対評価です。サピックスの通塾生は中学受験生全体の中でも上位層が集まっているため、本人が学力を伸ばしていても、周囲も同じように伸びていれば偏差値は動きません。全国統一小学生テストや合不合判定テストなど外部模試の結果や、過去問との相性も含めて総合的に判断してください。
子どもが「もう受験をやめたい」と言い出しました。どう対応すればよいですか?
まずは否定せずに受け止めてください。共感したうえで、数日間は勉強量を大幅に減らして休ませるのも一つの方法です。それでも通塾自体が強い苦痛になっている場合は、志望校の再設定や受験そのものの再検討も視野に入れましょう。中学受験は通過点で、お子さんの心身の健康が最優先です。
まとめ
サピックスは、家庭学習の運用力が問われる塾です。「ついていけない」と感じたとき、問題の本質は授業の難しさだけではなく、復習のサイクルが家庭で回っているかどうかにあります。
- まず一時的なつまずきか構造的な問題かを切り分ける。半年以上の低迷と家庭の疲弊が重なっていれば構造的な問題
- 宿題が回らない原因を学力面・運用面・精神面の3つに分解して特定する
- 小4は復習サイクルの定着、小5は比・割合・速さの補強、小6は取捨選択が要
- クラスはマンスリーで狙い、組分けは日々の積み上げで受ける
- 立て直しは、塾に相談、宿題の優先順位づけ、苦手科目の補強、個別指導の併用、転塾の順で検討する
- 運用面が原因のまま転塾しても、同じ壁に当たる
お子さんの中学受験を成功に導くために必要なのは、もっとやらせることではなく、何をやめるか、何を優先するかを冷静に判断することです。この記事が、いま悩んでいるご家庭の具体的な一歩につながれば幸いです。
この記事のテーマは、レフィーのYouTubeチャンネルの動画「【中学受験】サピックス最下層Aクラス生の壮絶あるあるを振り返る【シールは分業制】」でも解説しています。あわせてご覧ください。
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