中学受験において、模試の受験は欠かせません。
小4、小5の段階では、模試の目的は、同学年における相対的な学力評価や弱点の認識です。
小6になると、志望校の合格判定に応じて受験校の検討が必要になります。
模試によって問題の難易度や受験者数、受験者のレベルが異なるため、お子さんに合った模試を受験しなければ適切な結果を得ることができませんので、模試の特徴を把握しておくことが大切です。
今回は中学受験における四大模試(サピックス・四谷大塚・日能研・首都圏模試)の特徴と、模試の役割・活かし方を紹介していきます。
なぜ模試は必要、重要なの?
模試は以下のように活用することできます。
- 自分の現状の学力レベルを相対的に確認できる(偏差値)
- 志望校への合格可能性を確認できる
- 志望校・受験校選びの材料になる
- 弱点を発見し、対策を取ることができる
- 時間配分や本番の雰囲気に慣れる
5年生終わりごろまでは、志望校の合格可能性が判定される、いわゆる合格判定模試は多くありません。
そのため、5年生までに志望校の合格率をある程度認識するためには、模試の受験生のレベルを考慮する必要があります。
その塾(およびその模試の受験者)から志望校に何人くらいの合格者がでているのかを調べ、塾の先生にどのくらいの偏差値を取っているとどれくらい合格可能性があるのかを聞いておきましょう。
6年生の模試においては志望校の合格判定が重要になります。
受験本番はチャレンジングな難関校だけでなく、安全校も受験する必要がありますので、それらをバランスよく検討するための材料として模試の結果が必要になります。
模試を受ける度に大きく成績が上下するのであれば、それに応じて、模試の際に記入する志望校も調整しなければいけません。
入試日程も考慮した上で、チャレンジ校、安全校をバランスよく選びましょう。
中学受験の四大模試
中学受験では、「四大模試」と呼ばれる主要な模試があります。
それぞれ特徴が大きく異なります。
どの模試を受験するのかの選択、その模試の結果をどう受け止めるのかにおいても、特徴を把握しておくべきです。
ただし、実態としては、サピックスに通塾されている方はサピックスの模試を、四谷大塚に通塾されている方は四谷大塚の模試を、というようにお通いの塾の模試をメインに受験していくことになります。
小規模塾や個別指導塾、家庭教師で中学受験を目指される方は四谷大塚模試、首都圏模試を受験される方が多いかもしれません。
サピックス(SAPIX)の模試の特徴
サピックスオープンは、最難関校を志望する受験生向けの模試として知られています。
その特徴は以下の通りです。
- 受験者層のレベルが高い
- 問題の難易度が高い
- つまり、最難関校志望者向けで、偏差値が低く出る
サピックスオープンは、御三家をはじめとした最難関校を志望する受験生に最適です。
サピックスやグノーブルなど、最難関校への合格実績が豊富な塾の生徒が受験するため、最難関校への合格可能性を測る模試としてはかなり精度が高いと言えるでしょう。
ただし、問題の難易度が非常に高く、受験者の学力レベルも高いため、偏差値が他の模試よりも低めに出る傾向がありますので、結果の受け止め方には注意が必要です。
サピックスオープンの6年生の主な模試には以下のようなものがあります:
- 志望校判定サピックスオープン(6年生4月〜7月)
- 合格力判定サピックスオープン(6年生9月〜12月)
- 学校別サピックスオープン(難関校別の専用模試)
学校別サピックスオープンは、特定の難関校の入試傾向に特化した問題が出題されるため、志望校対策としても非常に有効です。
中堅校や標準的な学校を志望する場合は、問題の難易度、受験者層がかなりハイレベルであるという観点から、合格可能性を適切に把握するためには他の模試の方が適している可能性があります。
四谷大塚の模試の特徴
四谷大塚の合不合判定テストは、中学受験模試の中でも最も歴史が長く、最も多くの受験生が受験する模試です。
その特徴は以下の通りです:
- 簡単な問題~難問までカバーされたバランスの良い難易度
- 受験者数が非常に多い(約1.2万人)
- 50年以上の歴史を持つ
四谷大塚合不合判定テストは、簡単な問題から難問までカバーされており、さらに受験者数もかなり多いため、幅広い学校の合格を判定することができます。
四谷大塚の6年生の主な模試には以下のようなものがあります:
- 合不合判定テスト(年6回実施)
- 公立中高一貫校対策実力判定テスト(公立中高一貫校志望者向け)
- 学校別判定テスト
合不合判定テストは、その名の通り志望校への合格可能性を判定するためのテストです。
中学受験の模試の中では受験者数が最大規模です。
6年生の間に6回実施されるため、定期的に自分の位置を確認し、学習の成果を見ることができます。
最終回は12月になりますが、最終回近くは他塾の生徒の受験者数も増えてきますので、かなり精度の高い合格可能性を判定することができます。
また、公立中高一貫校を志望する場合は、「公立中高一貫校対策実力判定テスト」として専用の実力判定テストも用意されています。
日能研の模試の特徴
日能研の全国公開模試の特徴は以下の通りです。
- 標準的な難易度
- 中堅校志望者に適している
- 独自の合格可能性指標「R4」を使用
四谷大塚の模試と比べて、より標準的な難易度です。
「R4」とは、合格可能性が80%となる偏差値を示しています。
つまり、その偏差値をとっていれば、該当する学校への合格可能性は80%ということを意味します。
他の模試でもありますが、50%を示すものも存在します。
なお、日能研の6年生の模試の採点結果は受験翌日にマイページにアップされます。
日能研の主な模試には以下のようなものがあります:
・実力判定テスト(6年生4月)
・志望校選定テスト(6年生5月・6月)
・志望校判定テスト(6年生7月)
・合格判定テスト(6年生9月〜12月)
首都圏模試(首都圏模試センター)の特徴
首都圏模試の特徴は以下の通りです。
・比較的易しい難易度
・中堅校〜やや難関校志望者に適している
・偏差値が高めに出る傾向がある
首都圏模試は、主に中堅校を志望する受験生に適しています。
偏差値が他の模試よりも高めに出る傾向があるので注意しましょう。
首都圏模試の主な模試には以下のようなものがあります:
・合判模試
・適性検査型模試(公立中高一貫校志望者向け)
合判模試は一般的な私立中学受験向けの模試であり、適性検査型模試は公立中高一貫校を志望する受験生向けの模試です。
四大模試のまとめ
四大模試の特徴を表形式にまとめてみました。
SAPIX | 四谷大塚 | 日能研 | 首都圏模試 | |
難易度 | 難 | 難~標準 | 難~標準 | 標準 |
志望校合格可能性判定模試 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
志望校別模試 | 〇 | 〇 | × | × |
公立中学受験向け模試 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
その他特徴 | ■問題も難しいが、受験者層のレベルも高い。 ■そのため、偏差値は他模試より5~15程度低くでる。 | ■受験者数最大 ■四谷大塚以外の塾の生徒も多数受験する。 | ■6年生の模試は受験翌日に採点結果がアップされる。 | ■自宅受験可能。 |
どの模試を受けるべき?選び方は?
模試選びで最も大切なのは、お子さんの志望校や現在の学力レベルに合わせることです。
特に6年生においては、志望校の合格可能性をできるだけ正確に把握するため、より重要性が増します。
ただし先ほども触れましたが、お子さんがお通いの塾の模試をメインに受験していくことになりますので、そういった意味では、そもそも塾選びが重要になってきます。
自分が通っている塾の模試よりも難しい模試を受けたい、もしくは通っている塾内模試で偏差値が40前後になってしまい、志望校の合格可能性を適切に把握できている気がしない、というような状況であれば、通っている塾以外の模試も積極的に受けていく必要があります。
お子さんの志望校によって、各模試の問題難易度および受験者層の観点から、受けるべき模試は異なります。
目安は以下の通りです。
- 最難関校志望:サピックスオープン
- 難関校〜中堅校志望:四谷大塚合不合判定テスト、日能研全国公開模試
- 中堅校〜やや難関校志望:首都圏模試、日能研全国公開模試
一部日程が被っているものもありますので、お子さんの成績と志望校を踏まえて適切に判断する必要があります。
模試の結果の捉え方、活用方法
①偏差値(順位)と自塾の合格実績・志望校合格判定
模試の結果が返ってきたら、当然ですが、まずは偏差値を確認しましょう。
5年生までの志望校合格判定がない模試では、偏差値(および順位)と、塾の例年の合格実績を合わせて見る必要があります。
学校のレベル感と、塾の実績などの感覚がないと難しいと思いますので、塾の面談の際に「〇〇中学に合格するためには偏差値(順位)はいくつ程度を取っている必要があるのか」と質問しておきましょう。
6年生のほとんどの模試では、志望校の合格判定が出ますので、その結果を受けて志望校・受験校を見直すことができます。
②弱点の洗い出しと対策
多くの模試では、各科目、さらに各単元、問題のタイプごとに正答・誤答がわかるようになっています。
さらに、問題別に受験者の正答率が分かる場合もあります。
こういった情報から、お子さんの苦手科目、苦手分野を洗い出し、対策を取りましょう。
③テストの受け方の見直し
「前にやったはずなのになんでテストだとできないの・・・」
「解きなおしをするとかなりできるのに、なんでこんな点数なの・・・」
「わからないものは飛ばせばいいのに・・・」
こんな思いのお母さん、お父さんは多いのではないでしょうか。
多く場合、単に勉強不足であることが原因ですが、以下のような要因も考えられます。
- 問題文をよく読まない
- 計算を書く場所にルールや統一性がない
- 難しい問題に時間をかけすぎる
このようなテストの受け方を改善するだけでも点数が飛躍的に伸びることもありますので、問題用紙や計算用紙も参照しながらなぜ誤答したのかを考えてみましょう。
④志望校の再検討
5年生までは模試の結果を受けて無理に志望校を変更する必要はありません。
ただし、6年生であれば、模試の結果によって受験校、志望校の変更も検討しましょう。
模試の際に合格可能性を判定したい学校として選べるのは6校程度です。
そのため、例えば、6校すべてをチャレンジングな学校にしてしまうと、ほとんどが合格可能性20%程度になってしまうこともあります。
そうなってしまうと、受験校を検討する材料としてはあまり役に立ちません。
チャレンジングなレベルの学校は1,2校程度、実力相応な学校を1,2校、安全校を1,2校の目安で志望校を記載しましょう。
公立中高一貫校志望者向けの模試
主な公立中高一貫校向け模試には以下のようなものがあります。
- 四谷大塚:公立中高一貫校対策実力判定テスト
- 日能研:公立中高一貫校適性検査テスト
- 首都圏模試センター:適性検査型模試
- 早稲田アカデミー:適性検査対応力判定模試
公立中高一貫校を志望する場合、一般的な中学受験とは異なる「適性検査」という形式の入試が行われます。
適性検査では、教科の枠を超えた総合的な思考力や表現力が問われます。
模試も適性検査を意識して、私立・国立中学受験向けの模試とは異なる問題形式になっているので、公立中高一貫校志望の場合は必ず受験しておきましょう。
おわりに
中学受験における模試は、お子様の現在の学力を客観的に把握し、今後の学習方針を立てる上で非常に重要なツールです。
しかし、模試はあくまでも手段であり、目的ではありません。
模試の結果を効果的に活用し、お子様の成長と目標達成をサポートしていくことが大切です。
お子様の志望校や学力レベルに合わせて適切な模試を選び、その結果を冷静に分析し、効果的な学習につなげていってください。
お子様の努力を認め、励まし続けることが、受験を乗り越える大きな力となります。
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